武田氏批判 続き

2011.08.28


前回、武田邦彦氏が放射線被曝とガンとの関係について述べた文章に誤りが多いことを指摘しました。他にも多くの人が批判したようで、その後武田氏は以下のように文章を改めました。


甘く見られないように(2)・・・「どうせガンは多いのだから」


【第一結論】
1年1ミリを被曝すると、ガンにかかって死ぬ可能性が2倍に増える。
改訂後 → 1年100ミリを被曝すると、ガンにかかって死ぬ可能性が2倍に増える。

【第二結論】
1年1ミリを被曝すると子供はガンの危険性が150倍になる。
改訂後 → 1年100ミリを被曝すると子供はガンの危険性が150倍になる。

いずれも「年間1ミリシーベルト」ではなく「年間100ミリシーベルト」だということです。
150倍というのは意味不明ですが訂正になっていません。


訂正した経緯を武田氏は以下のように述べています。
http://takedanet.com/2011/08/post_0943.html


この前、「普通のガンで死ぬのと、被曝して子供が病気になるのは違う」ということを書いたときに、うっかり1年100ミリシーベルトと書くところを1年1ミリシーベルトと書いてしまいました。これまでこのブログでは被曝のことを何回も書いてきたので、ほとんどの読者の方は「また、書き間違っている」と思って、正しく解釈しながら読んでいただいたのですが、一部の方には誤記に気がつかれなかったようです。

なんであれほど繰り返し書いていることが一回、誤記すると何回かの内容がゼロになるのかわからないのですが、そのように解釈する方もおられるようです。

【再度確認:正解】

1年100ミリシーベルトを浴びると、平均的には0.5%の過剰発がんがでる。日本人の死亡原因の30%がガンということと、この過剰ガンとは質的に比較できず、もし質的なものも併せて比率を出すと、2倍から数10倍以上の危険性になる。

読者の方からのご指摘で気がつきましたので、修正しておきました。これまで通り、修正はお断りなくしていますが、今回の誤記が4カ所もあったので、お知らせしておきます。

どうも誤字や誤記がなくなりません。おっちょこちょいの性格はなかなか直りませんね。もし、それが気になる読者の方がおられましたら、私が慎重になるまで暫くほかのブログの方でお願いします。


武田氏は、読者は間違いを訂正しながら読むのが当然だ、それが出来ない者は読まないでくれ、と開き直っていますが、これではインターネットでの発言者として失格です。

また、誤字や誤記がなくならないのは自分の性格だとエクスキューズしていますが、これも発言者として失格です。これは性格ではなく、氏には自分の書いたものを読み返す習慣がないという、それだけのことです。氏はたくさん本を書きますが、たぶん次々に書いて編集者にチェックさせているのでしょう。しかしインターネットでは誰も直してくれません。


武田氏の根本的な間違い

ところで、武田氏を批判するのはそういう些末なことではなく、氏の主張そのものが根本的に間違っているからです。

前回は「
武田氏が提示している前提条件が正しいとして」という条件付きで、氏の計算の誤りを指摘するにとどめました。しかし実は、武田氏の主張は根本的に間違っていて、ひどいデマなのです。それは氏が前提条件を根本的に間違って解釈しているためです。

以下に氏の主張を再掲します。



相手は「日本人の30%がガンで死ぬのだから、1年100ミリ被曝しても0.5%しかガンにならないのだから、大したことはない。60分の1だ」と言います。これにはトリックがあるのです。

一つは、1年間と一生を隠して比較していることです。1年100ミリ被曝するということはそれによってガンになる確率が0.5%であると言うことです。だから、「日本人の30%」ではなく、1年で33万人、つまり0.27%が普通に1年でガンで死亡する確率なので、それに再発率を考慮して0.45%になります。

以上のことから次のように反論してください。

・・・・・・

「日本人のガンが30%というのは普通に死ぬときの比率ですから、ガンになる比率を1年あたりで示しますと再発率を加味して0.45%に当たります。これに対して1年100ミリ被曝すると0.5%がガンになりますから、被曝によって{普通にガンになる(0.45%)+被曝でガンになる(0.5%)}で約2倍になるということです。

(平成23年8月22日)



接続詞が意味不明なところがありますが、武田氏の主張をまとめると以下のようになります。


@日本人の0.45%が(被曝がなくても)毎年ガンになる。
A1年間に
100ミリシーベルトを浴びた時のガンの発生率は0.5%である。
Bゆえに、年間
100ミリシーベルトでガンは通常の約2倍(0.45+0.5)になる。


武田氏の主張の根拠は、国際放射線防護委員会が発表した「年間1シーベルトの被曝でガンの発生が5.5%増える」という推定が元になっていると思われます。その10分の1の0.1シーベルト(100ミリシーベルト)ならガンの発生も10分の1になって0.5%くらいだろうということです。

ところが国際放射線防護委員会の推定の意味は、100ミリシーベルト/年に相当する放射線を被曝した人は、その後の人生においてガンになる確率が0.5%増加するという意味であって、武田氏が言うような、毎年毎年0.5%ずつガンになるという意味ではありません。

武田氏はそこを間違えて、毎年毎年0.5%ずつガンになっていくと解釈しています。
その結果、「2倍になる」などというとんでもない結論になっています。
これは大間違いで、人心をまどわす悪質なデマです。

武田氏は、30%とは毎年毎年のことではない、一方で0.5%とは毎年毎年のことだ、この2つの数値をそのまま比較して60分の1だとするのはトリックだ。正しく比較するには、30%という数値を毎年のことに換算して比較しなければならない。30%の死亡率を毎年の発生率に換算すると0.45%になる。0.45と0.5だからガンの発生は約2倍になる、と言います。

しかし、0.5%とは毎年のことだ、というのが間違いなのです。
武田氏が勝手にそう解釈しているだけです。

なるほど、30%とは毎年毎年のことではなく、トータルのことです。
そして実は、0.5%というのも、毎年毎年のことではなく、トータルのことなのです。
そもそも、毎年毎年のことなど、誰も言っていないのです。


ですから2つの数字はそのまま比較してよく、そのまま比較するのが正しいのです。
すなわち、30%と0.5%とを比較して60分の1だというのは、正しい計算なのです。


どういうことか、ちょっと計算してみましょう。


いま現在、日本人が1億2000万人いるとします。これから生まれる人は除外して、いま生きている人がこれからどうなるかを見ると、たぶん100年後にはみんな死んでいて、その時の死因の30%はガンだというのが、ガンで死ぬ人が30%ということの意味です。
また、武田氏によればガンにかかって、ガンを死因として死ぬ割合は6割ということですから、ガンになる人は3600万人÷0.6=6000万人となります。つまり2人に1人がガンになります。

まとめますと、現代日本では自然状態で、1億2000万人のうち50%の6000万人がガンになり、30%の3600万人がガンで死にます。(この、ガンの多発こそが日本の大問題ですが)


次にこの1億2000万人の全員が、ある時、100ミリシーベルト/年の放射線を浴びたとします。すると国際放射線防護委員会の推定では、そのうちの0.5%の人がその後の人生においてガンになります。毎年毎年0.5%がガンになるのではなく、その後の人生で0.5%の人がこの被曝を原因とするガンになります。すなわち60万人がガンになります。その6割がガンを死因として死にますから、100ミリシーベルト/年の被曝によるガンでの死亡数は36万人となります。
自然のガンと合わせると死亡数は3636万人になります。


これが国際放射線防護委員会が言っていることです。
つまり、100ミリシーベルトの被曝で1%ほどガンが増えるということです。

ですから、6割が死亡というファクターを考慮しなければ、

「日本人の30%がガンで死ぬのだから、1年100ミリ被曝しても0.5%しかガンにならないのだから、大したことはない。60分の1だ」

という計算は正しいのです(たいしたことがないかどうかは別の問題です)。6割が死亡というファクターを入れれば、ガンで死ぬ人は0.3%で、30%の100分の1(1%)となります。

結局、「間違っている」とクレームを付けた武田氏の方が間違っています。

分かりやすいように、下の表にしました。


自然状態 100ミリ
シーベルト
被曝
100ミリ
武田氏の
計算
  全人口 12000万人 12000万人 12000万人
ガンになる人  6000万人    60万人  6000万人
ガンで死ぬ人  3600万人    36万人  3600万人


ですから、 「30%に対して60分の1だ」と言った人には、人をだましたりトリックを使ったりしようという意図はまったくありません。事実を事実として言っただけですから、当然です。武田氏は「トリックがある」と非難していますが、それは言いがかりです。


「子供のガンは100倍以上」 は正しい

ただし、子供のケースについては、なぜか武田氏はトータルで比較していて、100倍とか150倍という数値は、およそ正しい計算結果になっています。成人では0.5%を毎年加算しておいて、子供ではトータルで比較しているのは不思議??ですが、結果は正しくなっています。

100ミリシーベルト/年を被曝した場合、全年令で0.5%ガンが増加すること、広島では被曝による子供のガンが成人の3倍だったことから、子供の場合は100ミリシーベルトでのガンの発生は0.5%の3倍の1.5%になるだろうという武田氏の推論は合理的です。

1.5%とは10万人当たり1500人となります。
一方で、自然状態での子供のガンは10万人に8人だそうです。

結局、100ミリシーベルト/年の被曝によって子供のガンの発生は単純計算で1500÷8=187倍になります。

およそのところでは、10ミリシーベルトで10倍以上、20ミリで20倍以上、100ミリで100倍以上 ということになります。



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