集団的自衛権

2014.03.05


以下は憲法の前文と第9条です。原文は英文ですから、英文も添えておきます。

前文
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免がれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

We, the Japanese people, desire peace for all time and are deeply conscious of the high ideals controlling human relationship, and we have determined to preserve our security and existence, trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world.
We desire to occupy an honored place in an international society striving for the preservation of peace, and the banishment of tyranny and slavery, oppression and intolerance for all time from the earth. We recognize that all peoples of the world have the right to live in peace, free from fear and want.


第2章 戦争の放棄
第9条 [戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認] 
@ 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
A 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
Article 9.
Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.


50年以上前、中学3年の時に「憲法」の時間があって、新憲法を一条ずつ習いました。
国立大学の付属中学で、日教組の影響はほとんどない中学でした。

戦前の憲法は、いちいち「公共の福祉に反しない限り」という断り書きがあり、これによって政府は人々の権利を抑えることができたが、今の憲法にはそういう制約条項はない、と教わりました。いま自民党の改憲案を見ると、いちいち制限つきになっていて、まるで戦前に戻した案で呆れます。


集団的戦闘行為は禁じられている

さて、集団的自衛権とは、集団で戦争する権利のことですが、日本国憲法は明白にそれを禁じています。歴代内閣もずっとそう言ってきました。「日本国にも集団的自衛権はあるが、憲法によってそれは使えない」というのが歴代内閣の見解ですが、前段は余計なことで、前段があるので、「あるのに使えないのはおかしい」などというイチャモンがつくのですが、後段だけあれば十分です。要するに憲法は、日本国が日本の領外で、徒党を組もうと組むまいと、戦争することを禁じているのです。

もし最高指揮官である総理大臣から自衛隊にそのような命令が出れば、防衛大臣はそれを拒否すべきであり、自衛隊員はそれを拒否する権利を持っています。(それでは戦争が出来ませんから、自民党の石破茂幹事長は、敵前逃亡は死刑にする軍法を作れと言っています)


憲法第9条が自衛のための戦争まで禁じているかというと、マッカーサー将軍の初めの意図(マッカーサー・ノート)はそうでした。しかし、人に正当防衛の権利があるように、国家の自衛権は国家の自然権であって、敵が侵略して来ているのに、憲法が禁じているから反撃はできないなどというバカなことはありません。ですから、憲法の成立過程において、マッカーサーの初めの意図は修正され、自衛権は否定されていない文章になったのです。

憲法9条が否定しているものは、国権の発動たる戦争と、交戦権です。
明確にそう書いてあります。

憲法はもともと国民の行為を制限するためのものではありませんから当然ですが、憲法は、国民が武装することを禁じていません(銃刀法は禁止していますが)。国民が日頃から自主的に戦闘訓練をし、武器を蓄えておくことを憲法は禁止していません。外敵が侵略してきたときに、日本国民がベトナム解放戦線のように、民兵を組織してゲリラ戦を展開することを、憲法は禁じていません。

自衛隊はその延長上にあるものであって、その限りにおいて、その存在は憲法違反ではありません。

しかし、自分の国が攻められていないのに、国外に撃って出ることは、それは国権の発動によってしかできませんし、内外に交戦を宣言することになりますから、交戦権を持つことになります。
それは憲法が明白に否定しているのです。自衛隊の存在そのものは憲法違反ではありませんが、運用によっては憲法違反になるということです。

国権の発動たる戦争を放棄し、交戦権を認めない、と憲法が明記しているのに、解釈しだいで、国権の発動たる戦争は出来るわ、交戦権もあるわ、などという、真反対のむちゃくちゃな解釈は、できるはずがありません。小松法制局長官は、国会で白を黒と言いくるめるためだけに任命された人のようですが、理屈に合わないことをすると、心に無理な圧力がかかりますから、免疫系が不全となり、人は簡単に病気になってしまうのです。サルを檻に入れて、棒でつつきまわしていじめたら、3日で大きな胃がんができたという実験があります。

集団で戦争できる国にしたいなら、あれもこれも変えようとせずに、その問題にしぼって憲法を改定すべきです。それ以外に方法はありません。



朝鮮有事を想定しているのか?

しかしなぜ安倍総理は、ことを急いでいるのか。
どうやら安倍総理は朝鮮有事を想定しているようです。

安倍総理は、北朝鮮に武器を運ぶ船を公海上で臨検したい、北朝鮮からアメリカに飛ぶミサイルを公海上空で撃墜したい、という趣旨の国会答弁をしましたが、北朝鮮に海から武器を運び込む国はまずありませんし、飛んでいるミサイルは撃ち落とせません。

安倍総理が考えているのは、おそらく朝鮮有事に際して、朝鮮半島に自衛隊を上陸させて、米韓軍を助けることでしょう。アメリカから何か言われているのかも知れません。

しかし、いまの憲法ではそれはできないし、憲法は改定できそうもないから、白を黒と言ってもよいから、ともかく解釈を変えて国民をそれに馴らしておけば、いざとなれば朝鮮半島に出兵出来るということのようです。

安倍総理はそうは言いませんし、言えば韓国から余計なお世話だと言われ、北朝鮮からも文句を言われ、北東アジアが大騒ぎになるでしょうから、真の理由を言わないわけですが、それ以外に、いま憲法解釈の変更を急ぐ理由が見つかりません。


尖閣問題はさっさと国際司法裁判所に提訴して判断してもらえばよいことで、安倍総理は参院選の時、石垣島まで行って「断固死守するぞー」などと叫びましたが、ウヨクのデモならともかく、総理が海の向こうの中国に向かってスピーカーでそれを叫ぶことは、百害あって一利のない挑発行為です。

しかし朝鮮有事については、北朝鮮には狂気の指導者がいて何が起こるか分かりませんから、日本人は、心構えをしておく必要があります。

朝鮮で何が起ころうと知ったことではない、韓国軍や韓国民にどれほどの死者が出ようとも、米軍がどれだけ損害を出そうとも、わが国は、日本国憲法によって派兵を禁じられているのでお助けできません、悪しからず、ということで済むのかどうか。

そこで、憲法の前文です。

われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免がれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

憲法前文はダテに書いてあるわけではなく、これは国是であり、第9条より重い意味を持っています。「国際社会において名誉ある地位」を占めることこそが、貿易立国日本の最大の安全保障です。敗戦後の何もできない頃ならともかく、世界の大国となった現在、隣国の有事に際してわが国が何もしなければ、「国際社会において名誉ある地位」を占めることはできないでしょう。

日本はあまり半島にかかわるべきではないとは思いますが、ここは思案のしどころです。

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