ニセ科学批判者たちの論理の粗雑さ
2007.01.25

天羽優子氏が自分のブログで、ゲルマニウムの健康器具はすべてインチキだと言っている。
抜粋して紹介する。

http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/blog/index.php?logid=3900

なぜゲルマニウム(健康グッズ限定)の効果がまったく期待できないか

ゲルマニウムを使った健康器具(ブレスレットなど)が流行している。しかし、あまたの健康グッズと同様に、これもまた空騒ぎに終わるだろう。ゲルマニウムに接触しても、ほとんど何も起きそうにないからである。

こういうことを書くと、「実験もしないで」「試してもみないで」と言い出す人が必ず居る。また、「科学でわかっていないこともある」という定番の反論も出てくるだろう。だから、なぜそう言えるのかを説明してみる。

物質を分析する方法の1つに、赤外吸収分光というのがある。この赤外吸収を測定する方法の1つにATRというものがある。屈折率の大きいプリズムの上に試料を接触させて、赤外線を当て、プリズム表面付近にくっついている試料の赤外線吸収スペクトルを得る方法である。この実験では、プリズムの材料として、純度の高いゲルマニウムがよく使われている。もちろん、私もゲルマニウムを使って、赤外スペクトルの測定をしている。
さて、健康グッズとしてのゲルマニウムは、ブレスレットやネックレスに加工されて使われている。体に接触させることによる何らかの効果を狙ったものだろう。実際、

ゲルマニュームは、32℃以上の刺激を受けると、マイナス自由電子が飛び出し、乱れた生体の電子バランスを整え、異常電位を正常にして、細胞の活性化に働きかける。
ゲルマニュームは、医療用具として承認されている商品もあることから、そのパワーは科学的に証明されている

のような説明がなされている。

しかし、実は接触による効果はほとんど期待できないし、マイナス電子云々も根拠がない。
もし、ゲルマニウムが32℃以上で電子を出すならば、ゲルマニウムに接触している物質はその影響を受けるはずである。普段使っている赤外分光器は、内部に赤外線源があるから、試料を入れる場所は32℃位にはなっている。ゲルマニウムが試料に電子を与えるとすれば、それはゲルマニウムと試料が接触しているところで主に起きるだろう。ATRでは、光学系の配置から、ゲルマニウムに接触している部分を主に測定している。健康情報として言われているようなことが現実に起これば、それは試料の変化を引き起こし、スペクトルの変化となって見えるはずである。しかし、実際にはそんなことは起きていない。世界中で毎日測定に使っていて、どこからも異常が報告されないのだから、言われている現象は起きていないと判断するのが妥当だろう。 
なぜ、人体に触れると電子を与える(電流を流す?)はずのゲルマニウムが普通の試料の測定では何の効果も示さないのかをきちんと説明してくれない限り、ゲルマニウムブレスレットのふれこみを受け入れるわけにはいかない。
 「ゲルマニウムを使ったアクセサリーは、肝心の拠って立つ自然現象に根拠が無い状態で広まっているといえる。

しかしながら、天羽優子氏の、この論理は根本的に間違っている。

どこが間違っているか。

天羽氏が否定したのは、「ゲルマニウム販売業者の説明内容」である。科学的に考えて、販売業者が説明するような現象は起こっていないという、それだけのことだ。
そのことから天羽氏は、ゲルマニウムを身につけても健康効果はまったく期待できないと、製品の効果そのものを否定している。しかしそこには論理の飛躍がある。

もちろん業者の説明は間違っている。

しかし、だからと言って、「ゲルマニウムを身につけることには健康効果がない」という結論にはならない。「健康効果があったとしてもそのメカニズムは業者が言うようなものではない」ということにしかならない。健康効果があるかどうかは、上述のような天羽氏の論理では、判定できないのである。

暮れから正月にかけて、テレビで駅伝レースを多く見た。多くのランナーがネックレスやら絆創膏みたいなものやらを身につけていた。ゲルマニウムかセラミックか磁石か、私は知らないが、そういうグッズには、ぎりぎりのところまでハードな練習を続けている彼らだからこそ感知できる、何らかの効果があるのではないか。

そういう知恵や体験に対する敬意を、天羽氏はまったく持ち合わせていないが、ここでもニセ科学批判者たちの多くが「スポーツまるでダメ」であることが関係しているようだ。

競技者に何らかの効果があるのならば、一般にもそういう鋭敏な感覚を持つ人々がいてもおかしくはない。そしてそのような微細な感覚的事象は、まだ科学的な測定には引っかかってこないのかも知れない。


天羽氏は、「水商売ウォッチング」で次のように言っている。
http://atom11.phys.ocha.ac.jp/wwatch/intro.html
ここで取り上げたからといって、製品の販売がいけないということや、性能が悪いということは意味しません。理由は不明だが効果がある、という製品は、効果の確認がしっかりできているなら販売することには何の問題もありません。現段階で科学的説明が無いことを理由に、有用な水処理方法を捨ててしまうことは、やはり科学の誤用になるでしょう。メカニズムがあとから説明されるというのはよくあることです。

また、ニセ科学シンポジウムの「概要」でも、以下のように言っている。

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/events/JPSsymposium0306/amou.html
第六十一回物理学会年次大会(2006 年 3 月)シンポジウム「『ニセ科学』とどう向き合っていくか?」概要
「水商売ウォッチング」から見えたもの
天羽優子(山形大理)

批判は、「公開されている宣伝の内容」に対して行い、決して「製品に対する批判」にはならないように注意した。製品に対する批判は、実際に実験してからでないとやってはいけないことだからである。この基本は今も守っている。

もちろん、このような節度は大切である。

しかしながら、天羽氏において、この節度はまったく守られていない。

上述のゲルマニウム批判に見られるように、天羽氏は「業者の説明」を批判するだけでなく、さらに進んで製品の効果や性能そのものを、いともたやすく否定する。そしてそのような考え方や言説は、実は、「水商売ウォッチング」全体を貫いているのである。

なぜ、そういうことになるのか。
なぜ天羽氏は、自分で何度も繰り返している節度をいっこうに守ろうとしないのか、あるいは守れないのか。
それは、彼女が、自分の論理に飛躍があることに気づかないからである。
そのことが、上述のゲルマニウム批判でよく分かる。

以上は、天羽氏の論理が間違っているという話だが、科学的な点でも天羽氏は、間違っているとは言わないが、ピントがはずれている。

温度が32度でゲルマニウムから電子が飛び出ることはないことを、彼女は自分の守備範囲である赤外分光の例で説明するわけだが、何も赤外分光やATRの話をするまでもなく、そんな常温で電子を放出するような物質は、ベータ崩壊する放射性物質以外にはなく、ゲルマニウムはそのよう物質ではないと言えば、それでおしまいの話である。
「ゲルマニウムは常温で電子を放出しない、ばかもん」と言えば、それで済む話なのだ。

だから、もし何らかの効果を人々が感じているのならば、それは温度ではなく振動である可能性がある。身につけるということは、体温が伝わると同時に振動が伝わっているわけだから、温度でなければ振動だ。赤外分光器は体の動きほどには振動していない。
研究する価値はある・・・・のかも知れない。


さて、さらに天羽優子氏は、自分の守備範囲でないことも平気で論評する。
「水商売ウォッチング」の掲示板で以下のやりとりがある。

[23076] 意見です
トマト のコメント: 2007-01-15 17:23 :
スーパーイオンクリーンについて色々と話されているようですね、
事実がどうなのかは解らない。が今の所答えではないのでしょうか?
科学的に実証されていない=ウソ では無いでしょう?
使った事も無い商品をけなすのはいかがな物か?


[23077] その認識は違います
apj のコメント: 2007-01-15 18:49 :
(注:apjは天羽優子氏のハンドル名)

>事実がどうなのかは解らない。が今の所答えではないのでしょうか?

違います。
1)科学的とはいえないデタラメな用語で宣伝をしている(イオン封鎖など)=事実
2)マルチ商法で売っている=事実
3)そのマルチの宣伝で、「癌が治った、アトピーが治った・・・」という薬事法違反の宣伝が行われている=事実
4)「醤油や食用油をボトルのままスーパーイオンクリーンに浸すと美味しくなる」という、我々の知っている科学を真っ向から否定する内容を宣伝している=事実

でしょう。

>科学的に実証されていない=ウソ では無いでしょう?

 でも、1)、4)はほぼ明白なウソですね。


私も1)については、ウソかどうかは知らないが、よく分からないおかしな説明だと思う。

しかし、4)は実験で確認できることだから、実験せずに「明白なウソ」と断定することは、科学者として間違いである。
実験をしないならコメントを控えるべきである。

実験してみれば簡単に分かることだが、いろいろな方法で水は変わり、その水に醤油などをボトルごと浸すと、おいしくなるかどうかは人それぞれだが、味が変わるという現象はしばしば起こる。味の変わり方は、さまざまな食品でおしなべて、「角がとれてまろやかになる」という感じである。だから「スーパーイオンクリーン」という道具で味が変わっても別に不思議ではない。

そのような現象は「天羽優子氏が知っている科学を真っ向から否定する」ことではなく、単に現在の科学界や天羽優子氏が、そのことを知らないだけである。
昨年、私は神戸大学の4人の教授たちに味の変化を実感してもらっている。
4人とも、えーっ!!!と驚いていた。

2)3)については、天羽優子氏の専門性や守備範囲の外の事柄だから、ふつうの感覚の持ち主ならば論評を差し控えるところである。

ニセ科学批判者たちは、みな、二言目には「しょせんは金儲けだ」と言い、訪問販売や連鎖販売を、個別のビジネスを調べもせずに悪徳商法だと断定する。彼らはみな、「個別に調べずにすべてを否定する」ことが平気な人々である。

その一人が、産業総合研究所中部センターの柘植氏だ。
彼はキクログのコメント欄で次のように言っている。

http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1113892134
812.柘植 December 4, 2006 @ 10:40pm
こんにちは、おとうさんさん。
 
ニセ科学批判を始める前には、悪徳商法啓発系の掲示板世界で名の売れた悪徳商法批判者でもあった柘植と申します(悪徳商法批判者の時は別なハンドルネームでしたけどね)。
こういう連鎖型の販売は特定商取引法という法律で「厳しく規制」されている販売方法です。法律では「連鎖販売」として定義されますが、一般にはマルチ商法という名前で知られています。法律で禁止になっていないのは、憲法の「職業選択の自由」との関係によります。ちょうど、暴力団が「結社の自由」との関係から暴力団を結社することそのものは禁止されないのと同じです。

法律で連鎖販売取引として規制を受けるビジネスが、「一般でマルチ商法と呼ばれるビジネス」ということはない。それは柘植氏が勝手にそう考えているだけである。
10年ほど前、東京地裁で、

「マルチ商法という言葉には悪徳商法の意味が含まれているというのが一般の認識だから、健全なビジネスをマルチ商法と呼べばそれは名誉毀損に当たる」

という判決が出て、原告被告の双方とも異議なく、その判決は確定している。

神戸にシャルレという下着の製造販売会社がある。雇用や納税で神戸の経済に大きな貢献をしている。社長は女子バレーで有名な三屋裕子さんだ。神戸市の産業局も支援している。その販売の仕組みは「連鎖販売取引」として規制されている方法である。

「規制されている」ということは、「やってはいけない」ということではない。「車は左」という規制は、車は走ってはいけないということではない。左側を走ればよいのだ。連鎖販売取引は、それを規制する法規を守れば、やっていいのである。
当たり前だ。それが日本が自由な国だということの、意味である。

柘植氏は、東京地裁の判決を無視し、シャルレや三屋裕子氏や神戸市役所を、マルチ商法だ、暴力団と同じだと非難している。旧ソ連や北朝鮮のような考え方であり、天羽優子氏ともども、時代遅れの遺物と言ってよい。

本題からいささか外れるが、彼らはまた、司直や正規の手続きによらず、インターネットで風評被害を煽ることで、自分たちが独断で悪徳だと決めつけた者たちを、社会から排除しようと熱心に活動している。それが、ニセ科学批判者たちのホームページやブログの真の姿である。「水からの伝言」に対するヒステリックな批判活動はその典型だ。
そしてなお悪質なことに、彼らは自分たちの目的のために、大学の権威を、大学の同僚や学生たちの了解なしに濫用している。まったく民主主義の敵と言ってよい。


本題に戻って、むろん個別に見てそれが悪徳商法であれば批判すればよいし、刑事告発しても良かろうが、しかしそれが連鎖販売取引として法で規制されるというだけで、柘植氏のような批判をすることは、事実誤認であり不当である。

また、柘植氏は続けて次のようにも言う。
854.柘植 December 11, 2006 @ 05:49pm
こんにちは、皆さん。
  
私が悪徳商法批判者であった時代に、「悪徳商法は一般に訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売などの一般の店舗販売とは異なる販売態様をとる」という事を説明するために、「生活道路の通り抜け近道」というたとえ話をしていたことがあります。
つまり、大きく迂回した幹線道路があり、そこを「近道になりそうな生活道路が通っている」というたとえ話です。地図で見ると距離も近くて「近道」になりそうに見えます。しかし、幹線道路なら60キロで走れるし、赤信号で止まる回数もそう多くは無いわけですね。ところが狭くて見通しが悪く、人や車が飛び出すかもしれない交差点の多い生活道路を通り抜けると「事故を起こさないため」には、ゆっくりと気を付けて走り、見通せない交差点の度に一時停止をしてゆっくりと侵入しなくてはなりませんから、近道にはならない訳です。
ところが、その近道を近道として利用する方法があります。事故の事など気にせず、60キロで突っ走り、交差点を見通せなくてもその速度で走り抜けることです。こうすれば、事故をして様々な問題を抱えることになるリスクと引き替えに近道をすることができます。


柘植氏は、訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売を、スピード違反をしているとほとんど断定している。しかし留保条件なしに、これらのビジネスがすべてスピード違反をしているかのように言うのは、不当である。

期限切れの牛乳を使う食品会社もあるし、車軸が外れるトラックを作る自動車会社もあるし、粉飾決算をする大証券会社もあるし、保険金を支払わない保険会社もある。

毎日の新聞タネに事欠かない。それらはすべて悪徳商法である。

悪徳かどうかはビジネスの形態では決まらないのだ。ひとつひとつのビジネスを個別に見て個別に判断すべきであって、柘植氏のような一般化や、暴力団のたとえ話は不当である。

また、柘植氏は、訪問販売や電話勧誘販売や連鎖販売に従事する者を、「平穏な町を通り抜ける部外者」と認識しているが、現状認識が間違っている。
連鎖販売取引に関わる人が、今では600万人いると言われている。それらの人々は、町を通り抜ける部外者ではなく、その町に住んで、その道を生活道路としている人々なのだ。柘植氏にはそれが見えていない。やはり時代遅れの遺物と言うしかない。



最後に、京都女子大学の小波教授のブログから紹介しよう。

http://www.cs.kyoto-wu.ac.jp/~konami/diary/
2007-01-14 糖鎖のニセ科学
小児科医からのメール
ダウン症児のケアの問題にかかわっておられる小児科医の方を,私の学部で非常勤講師としてお願いしています。その方から,最近糖鎖がダウン症に効くという風説が流れていて,非常に困惑しているということを知らされました。一度調べてみてくれないかというのです。なんとまあ,検索してみたらその通りです。今日の時点でGoogleでは11700件もヒットします。知りませんでした。
この件でご存知の方がおられたら,コメントいただけると幸いです。よろしく。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
柘植 (2007-01-16 16:20)
こんにちは、こなみさん。私も知っている訳ではなくて「調べる」訳ですが、こなみさんとは別方向で調べないと意味が無いので、悪徳商法批判者型の調べ方をしてみました。というのは、健康食品系で「節操のない」トークが蔓延する時には「マルチ商法」が絡んでいることが多いので、そちらから調べた訳です。

こなみ (2007-01-17 23:54)
なるほどね。私はとりあえず分子生物学の側から見ていこうと思って糖鎖の生化学なども含めて眺めているところです。

ここでも柘植氏が登場し、糖鎖は悪徳商法だ、と言わんばかりの言論を展開している。

しかし、柘植氏の職場である産業総合研究所には、「糖鎖の研究プロジェクト」があって、柘植氏の先輩や同輩たちが熱心に研究しているのだ。ウチでやるのはいいが、よそは悪徳だ、ということか? 勝手な言い分である。

さてしかし、
小波教授の呆れた点は、標題がいきなり

糖鎖のニセ科学


と、なっていることだ。

おいおい、小波くん、
君は糖鎖について、これから調べようとしているのではないのかい?
それがどうしていきなり「糖鎖のニセ科学」になるんだい?

「知り合いの小児科医が文句を言った」
「インターネットにたくさん出ている」・・・・

これだけで小波教授にとっては、ニセ科学と標題を付けるのに十分らしい。


ニセ科学批判者たちの考え方は、以上いくつか例を挙げたように、粗雑で非科学的で、全体主義的である。

これらはほんの最近の例に過ぎないが、過去の言論もすべて、このように粗雑で非科学的で全体主義的である。これからも、語るほどに、彼らはボロを出すはすだ。

なぜか?

人間が「浅い」からである。
おわり
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