お茶女裁判 その3 2007.08.06
我々の訴状(6月7日提出)と、それに対するお茶の水女子大学の答弁書(7月11日提出)の概要を以下に示す。
原告の主張 被告の主張 1 名誉毀損 「水商売ウォッチング」への当該書き込みは
原告の名誉を毀損している否認する 2 プロバイダーとして
権利侵害を知り得た
かどうか削除要求をしているので、
プロバイダー責任法における、
「被告は原告の権利が侵害されていることを
知り得た」
というケースに該当する争う 3 賠償責任はあるか 被告は原告の損害を賠償する責任がある 争う 4 大学としての
高度な注意義務大学であるので、そのサイトで名誉毀損や
侮辱が起こらないよう、通常のプロバイダー
よりも高度な注意義務がある争う 5 大学の権威による
内容の信憑性の増大国立大学のサイトなので、そこに書かれたことは
他のサイトよりも一般に信用されやすい争う
法律的な言葉の使い方として、「否認する」というのは「事実」に関して、それを否認するということで、「争う」とは、「評価」に関して、考え方の違いを議論するということのようである。
いずれにしても、全面的に対立している。
これらの訴状と答弁書に基づいて、第1回の裁判が7月17日の午後に行われた。
被告側からは、代理人(弁護士)1名と司法修習生1名(弁護士が連れてきた)が廷内に入って被告席についた。
原告側からは、代理人(弁護士)が原告席についた。
お茶の水女子大学の理事補佐1名、人事部事務官1名が、傍聴席に来ていた。東京から2人も出張である。
私も、裁判は初めてでもあるし、様子を見ながら傍聴席で聞いていた。
弁護士からは「初日は顔合わせだけですから、来なくていいですよ」と言われていたのだが、裁判所は会社から歩いて3分のところなので、出かけて行った。
始まってみると、裁判長はなかなか闊達な人で、テキパキと指揮をして、意外なことに、いきなり実質的な審理に入った感じだった。
裁判長は開口一番、
「どうしてこれで、訴訟するの?ふつうはしないよね」
と、訴訟になったことを不思議がっていた。
そして原告代理人に対して、訴訟に至ったいきさつについて、もう少し説明を補充してほしい、と要求した。
原告側は了承し、次回までに説明を補充することを約束した。
これは、意外な、というか、望ましい展開で、私は裁判というものは杓子定規に「文言」の解釈をするだけかと思い、したがって背景の説明など、してもしょうがないと思ってほとんどしていなかったのだが、裁判長は背景の説明を求めてきたのである。
「水商売ウォッチング」がどういう経緯で作られ、誰によって、どのように管理、運営され、これまでどのような書き込みがなされてきたか、そういう全体像を、我々は裁判長に説明することになる。
さらに裁判長は、
「書き込み人は特定できてるんでしょ?」
と被告代理人に尋ねた。
これは、裁判長にとっては、裁判の開始に当たってごく当然でありきたりの「事務的質問」であったはずだ。
ところが、このときのお茶の水女子大学の回答が、まことに意外で奇妙なものであった。
被告代理人は、
「特定はできているが、微妙な問題があって、その名は明らかにしたくない」
と答えたのである。
え、どういうこと? 裁判長は怪訝な顔で、再度、同じ質問をした。
そして、お茶の水女子大学は、再度、同じように答えた。
なぜ、そんなに奥歯にモノがはさまったような言い方をするのだろうか。
裁判長ならずとも、誰だって不思議に思うはずだ。
しかし、驚くことには、もっと上があった。
被告代理人は裁判長を間にはさんで、原告代理人に直接、実に奇妙な質問をしてきたのである。彼はこう尋ねてきた。
「サイトの管理責任者である富永教授は、自分に責任が及ぶことをとてもいやがっている。ついては、原告は、富永氏を提訴する予定はあるか?」
いやはや、ずいぶんザックバランに手の内を明かすものだ、と驚いたものである。
原告代理人は、「今のところ富永氏を提訴する予定はない」と回答した。
被告代理人は、「わかりました」と答えた。
しかし、ふーむ、これは、どういうことだろう。
この問答は、第一印象としては、被告代理人が富永氏から「なんとか頼みますよ」と頼まれてきて、質問しているように聞こえる。
しかし、被告はお茶の水女子大学であって、富永氏ではない。
だから、裁判で、富永氏がどうのこうのという話には、なるはずがない。
それなのになぜ、聞かれもしないのに、富永氏の名が被告代理人から出てくるのか。
被告代理人はお茶の水女子大学に雇われている。
富永氏に雇われているわけではない。
被告代理人は、まずは、お茶の水女子大学の利益を代弁するのが責務である。
富永氏のことは2の次であるはずだ。
その被告代理人が、なぜ、裁判の冒頭でわざわざ富永氏の名を出してくるのか。
この日、お茶の水女子大学は、書き込み人の名を明らかにしなかった。
この日、お茶の水女子大学は、聞かれもしないのに「富永氏がいやがっている」と言った。
これらの言動の中に、お茶の水女子大学の何らかの意図があるものと思われる。
つづく