もんじゅの開発は中止すべし

2011.06.27


福井県敦賀市で運転中の高速増殖炉「もんじゅ」の炉内に落下した金属棒を引き上げる作業が6月23日から24日にかけて行われ、無事成功しました。




産経新聞ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110624/crm11062409300001-n1.htm

ヒヤヒヤ…もんじゅ落下装置の引き上げ完了 
1分間2.4センチずつ

2011.6.24 09:30

日本原子力研究開発機構は24日、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の原子炉容器内に昨年8月から落下したままだった炉内中継装置(全長約12メートル、重さ約3.3トン)の引き上げが完了したと発表した。機構は装置の点検などを経て今秋までに事故前の正常な状態への復旧を目指す。

 機構は当初、23日午後の早い時間に引き上げに着手する予定だったが、準備段階で部品に不具合が見つかり、夜にずれ込んだ。

 約20人の作業員が現場責任者の「炉内中継装置の引き抜き作業を開始します」という指示でクレーンを使い作業を開始。ナトリウムが外気に触れて反応しないようアルゴンガスを充填した専用の大型収納容器を通し、10分間に24センチのペースで約8時間かけて徐々に引き上げた。最後に容器下の仕切り板を閉めて完了した。

 装置は炉内にあったため高温で、今後構内で冷えるのを待って搬出。今秋までに分解して損傷状況などを詳しく調べ、引き上げに先立ち撤去した炉上部の配管なども再整備する。

原子炉容器内に落下した炉内中継装置の引き抜き作業が完了した=24日午前5時4分、敦賀市のもんじゅ(日本原子力研究開発機構提供)





原子炉容器内に落下した炉内中継装置の引き抜き作業が完了した=24日午前5時4分、敦賀市のもんじゅ(日本原子力研究開発機構提供)




無事に終わったのは良かったですが、研究機構が、さぁ、もう一回チャレンジするぞ、というのが困ったものです。




今から30年も前に、馬野周二博士は以下のように高速増殖炉を批判しています。





高速増殖炉

最近はOPEC騒動に吸い取られたものか、ウラン枯渇および価格上昇についてマスコミ情報が消えているようであるが、数年前まではこの問題がたいへん怖れられていた。現存の炉は天然ウラン中 0.8% しかない同位元素235ウランしか燃やすことができず、それもだいぶ燃え残ってしまう。ウランの世界推定埋蔵量と原発の将来計画とから計算すると、ウランは石油よりもさらに稀少なエネルギー資源となる。これが増殖炉開発の理論づけであった。

高速増殖炉で解決するか

この、必至であると見られたウラン枯渇に対抗するためには、天然ウランの大部分である238ウランを使えるようにすればよい。ところがこの238ウランは在来の低速中性子炉では燃えず、高速中性子炉に用いると増殖という現象を起こして燃えるようになる。これが完全に行われると、ウラン資源の問題は完全に解決する。
ウラン資源枯渇を信じた(あるいはふりをした)科学者、技術者は、この高速炉の開発に飛びついたのである。日本を含めた先進工業国はみな、大小深浅はあれ、これに手を出したが、本気になって大金を投じたのは日本、ソ連、フランスだけである。とくにフランスは巨費をかけて原型炉まで建設するに至っている。
ところが浅い技術者、科学者の目ではなく、より深く、広い視野で事態を精査すれば、本当にウランがそんなに少ないのか、さらに高速増殖炉が現実に商業化しうるものなのかについて疑わざるをえない。
(以下、埋蔵量についての記述は省略)


飛躍的に困難な高速炉技術

つぎに高速増殖炉がはたして技術的に可能であり、経済的にも有効なものであるかどうかを見よう。軽水炉でもその炉の熱負荷、すなわち発熱する部分の体積と発熱量との比は火力発電所に比して2ケタ近く大きい。これは小さい体積で大きい熱を出していることである。ところが、高速炉ではこれがさらに1ケタ大きくなる。すなわち高速炉の炉心は恐るべき熱の塊りとなる。もちろんそれは極度にすみやかに冷却しなければ、あっという間に溶けてしまう。つまり炉心溶融を起こす。

さらに厄介な問題が控えている。それは炉心中を飛び交う中性子が非常な高密度であり、また高速であるため、炉の内部を構成する材料(これは金属なのだが)を壊してしまうことである。これを中性子による金属のスウェリングといっており、原子的現象であるから避けることができない。つまり炉心構造物はその強度が落ちる前に取り替えなければならない。これはなかなかたいへんなことで、時間もかかるし金もかかる。しかも用済みの廃材は、なお相当期間プールにでも漬けておかないと放射線が出てくるので置き場がない。

その上に厄介なのは炉心冷却剤のナトリウムである。とにかくマイクロバスぐらいの体積から100万キロワットの熱が出るのであるから、手品のような早業で熱を取り去る必要がある。その他の理由もあって高速炉に冷却剤として使えるのは金属ナトリウムだけとなる。そこで溶融ナトリウムをポンプで炉心と熱交換器の間を循環させる。ところが、このナトリウムは高速中性子の衝撃を受けるから崩壊し放射性となる。そこでもう一度別の溶融ナトリウムと熱交換して、そのナトリウムを蒸気発生器に送り込む。すなわち炉心を取り出して蒸気を発生させるのに二度余分に熱交換しなければならない。




故障率というものは各段階のそれを掛け合わせたものになるから、危険度は沸騰水型(熱交換1度)に対して加圧水型(熱交換2度)は2乗、高速炉は3乗になる。もちろん故障は熱交換器、循環ポンプ系のみではないから、このような単純な計算はかならずしも成り立たないが、ともかく高速炉は軽水炉に比して飛躍的に難しい技術であることが明らかとなる。高速炉のように基礎が危い上に3階まで建て増ししたのでは、倒壊すなわち大事故の確率は大きいと言わなければならない。

意味のない投資をする理由

以上見たところによれば、ウランも石油同様、資源枯渇と言うことはなく、価格も本質的には上昇する傾向はない。石油価格の高騰があればつられて上昇するおそれがあるが、それは相対的なものである。一方、高速炉の技術は問題山積で、とても商業技術になる見込みはありそうにない。
こう見てくると、有能であるべきはずの大工業国の政府がこのような意味のない仕事に大金を投じているという病状を解明しなければならなくなる。
この原因はすでに明らかにしてある。すなわち原爆に由来する科学、科学者に対するいわれのない信仰、そして技術、技術者への誤認、そして一方で、科学者、技術者の自己過信と傲慢、すなわち人間としての徳、謙虚さの亡失に発するのではないだろうか。







現在、ロシアが実証炉を運転中ですが、それ以外の国はすべて撤退しています。

日本の原発は、地震が多いこと、国土がせまく人口が密集していること、開発を推進する官僚機構の無能無責任が実証されたこと、などの理由から、もう一度事故を起こす前に、できるだけすみやかに運転中止、廃止に向かわなければなりません。

ましてや高速増殖炉を推進する理由はなく、核燃料サイクルには展望もまったくありません。



定期点検を終えた原子炉の再稼働について、最近あちこちから、早く再稼働させろという声がやかましくなっていますが、福島県の状況を見て、立地県の知事が慎重になっています。

これは当然です。

これまでは、「安全神話にだまされて・・・・」という言い訳ができましたが、それはもうできません。もし知事が、再稼働する原子炉を安全と認めてOKを出せば、事故があったときの責任の大きな部分を県知事が負うことになります。

立地市町村には原発の恩恵はあるかも知れませんが、県知事のレベルになればその程度の見返りは県政全体から見れば大きなものではありません。福島県が失ったものを見れば、県知事レベルでの判断は自明と言ってもいいでしょう。山口県でも、これまで原発を推進してきた県知事が反対になりました。

もんじゅを再稼働するのに、法的にどうかは知りませんが、政治的には、福井県知事がどう判断するかが大きな意味を持つでしょう。知事が、もんじゅの妥当性を十分に検討し、県民の意見をよくよく聞いて判断されることを期待します。





トップに戻る