事件の発端となった将棋

2017.01.05

今回の事件は、渡辺明(カッコ竜王)が三浦九段を陥れようとした誣告(ぶこく:うそをついて相手をおとしめる)事件ですが、その発端となったのは2016年7月26日の久保九段対三浦九段戦(竜王戦トーナメント準決勝)と、2016年10月3日の三浦九段対渡辺(カッコ竜王)(A級順位戦)の2つの将棋です。

まず久保九段対三浦九段を見てみましょう。
将棋DB2 より↓
https://shogidb2.com/






61手目 久保九段が金を5三にかわしたところです。三浦九段はここで 6七歩成 を決行しました。そして勝負はそのまま、ほぼ一直線で三浦九段の勝ちになりました







久保九段は、この手が三浦九段では指せない手だと言い、きっとスマホでカンニングしたに違いないと疑って将棋連盟に提訴しました。久保九段は、夕食休憩後に、三浦九段の手番の時に三浦九段は30分も席を離れてどこかへ行ってしまい、戻ってきてすぐこの手を指したので、きっと離席中にスマホで将棋ソフトを見た、あるいはスマホで外部と通信したに違いないと訴えて出たそうです。

連盟は提訴を重大に受け止めて、8月と9月に三浦九段の4局に隠しカメラ(当人たちが存在を知らないカメラ)を設置して、三浦九段に怪しい行動がないかを監視しました。その結果、三浦九段の行動に不審な点はまったくありませんでした。そして三浦九段は普通に勝ち続けたのです。

しかも、夕食休憩後の30分の離席そのものが、棋譜を調べると存在していなかったのです。三浦九段は消費時間6分とか3分とかで指しており、30分以上の消費時間は記録されていなかったのです。(相手の手番の時に離席してカンニングしても、相手がどういう手を指してくるか分からなければあまり意味はありません)
久保九段の訴えはいったい何だったのか、と首をかしげてしまいます。

ところで、離席そのものは将棋では許されています。時には両者が離席していて、誰もいないこともあります。将棋盤の前で考えている時間は、テニスで言えばラリーをしている時間、サッカーで言えばボールを蹴りあっている時間です。試合中にはボールが動いていない時間もたくさんあるわけで、将棋の対局でも、ずっと考え続けているわけでもなく、休憩したり風に当たったりリラックスしたりすることがあります。

三浦 vs 渡辺は次のとおりです。






三浦九段は27手目に4五桂と指しました。これまでこの手は、すぐに桂馬を取られる展開になるので良くないとされて来ました。 







実際そのあとすぐに、渡辺(カッコ竜王)に4四歩と突かれて、桂馬は取られることになりました。 








ところがこの時、7一角と飛車取りに打つ手があって、飛車が逃げると5三桂成らずと王手で歩を払い、5一王と逃げたところで、さらに6一桂成と王手して、同じく王に、4四馬と歩を取りながら角を成って次図になります。  




先手の三浦九段は桂馬を損していますが、歩を2枚取り、好位置に馬ができていて、これで先手有利だということです。勝負はこのまま三浦九段が押し切りました。
三浦九段は4五桂の可能性を若手から質問されて、それは成立しないといったんは答えましたが、実際に研究してみたらそうでもなく、成立していることが分かったので、実戦で試そうと狙っていたそうです。

渡辺(カッコ竜王)は敗戦直後の自分のブログでは、自分の差し方が悪かったと普通に認めています。しかしその数日後になぜか、この手は三浦九段では指せない、スマホでカンニングしているとして、10月7日に将棋連盟の島常務理事に訴えて出ました。

それ受けて連盟は三浦九段の竜王挑戦権を剥奪し、挑戦者決定戦で敗れていた丸山九段に交代させました。
丸山九段は、挑戦者決定三番勝負で三浦九段と戦って敗れていたわけですが、対局中に三浦九段に対して何の不審もなかったし、三浦九段はカンニングなどしていないはずだ、といったんは断りましたが、連盟の強い要請(スポンサー読売新聞の意向など)で引き受けざるを得ず、3日後に始まる竜王戦に急遽出場し、10月から12月まで渡辺(カッコ竜王)と7局を戦い、3勝4敗で破れました。

第1局はいかにも準備不足、モチベーション不足で、良いところ無く負けましたが、2局目からは3勝3敗です。
第6局は以下のように快勝しています。 







渡辺(カッコ竜王)が5八にいた金を4七に上がったところです。ここから丸山九段の一挙の猛攻が始まります。  






6五歩と突いて、同歩、同銀、同銀、同桂と進んだ局面です。ここで渡辺(カッコ竜王)は6六銀とかわしますが、 








そこでいきなり5七の歩をとって桂馬を成捨てるのが好手で、これで先手はしびれてしまっています。同銀と取れば6九角が、同金と取れば3九角が痛打になります。丸山九段はそのまま攻めきって勝ち、勝負は12月21日の最終戦に持ち越されました。

これは、前掲の三浦vs渡辺戦と良く似た、桂損の攻めです。渡辺(カッコ竜王)は、あそこで攻めて来られて、そのままつぶされるとは思わなかったと言っていますが、竜王戦では金属探知器が導入されて、スマホの持ち込みは厳禁されていましたし、そもそも丸山九段はコンピュータ将棋は大嫌いで、まったくやっていないわけです。つまり、このような手はプロの将棋指しなら思いつくということです。

ですから、三浦vs渡辺戦での三浦九段の桂損の強攻策を、あれはコンピュータの手に違いないなどというのは、まったくの言いがかりに過ぎないわけです。

そんなことは当然、渡辺(カッコ竜王)も承知です。つまりコンピュータうんぬん、スマホうんうん、というのはカムフラージュでしかありません。
実際、コンピュータがらみの「訴因」は、第3者委員会によって、すべて一笑に付されて却下されています。

渡辺(カッコ竜王)の真の意図は何だったのか?  つづく



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