日本の限界密度

2011.09.03


福島の原発事故は世界を変えました。世界の人々の意識が変わりました。


下の表は、世界のGDP(国内総生産)上位12カ国のGDPと原発設備容量と国土面積とを、GDPの大きい順に並べたものです。


そして、GDPと原発設備容量とを、それぞれ国土面積で割って密度を計算してみました。




国名 GDP
10億ドル
原発設備
万kw
国土面積
km2
GDP
密度
原発
密度
アメリカ 14657 10606 9629 15 111
中国 5878 912 9640 6 9
日本 5458 4947 377 145 1312
ドイツ 3315 2137 357 93 598
フランス 2582 6602 632 41 1045
イギリス 2247 1196 242 93 494
ブラジル 2090 201 8514 3 2
イタリア 2055 0 301 68 0
カナダ 1574 1343 9984 2 13
インド 1537 412 3287 5 13
ロシア 1465 2319 17098 1 14



下のグラフはGDP(赤)とGDP密度(緑)です。






日本のGDPは世界3位です。昨年中国に抜かれて、2位から3位に後退しました。
しかし国土面積当たりのGDP密度は断然世界1位です。

アメリカ、中国、ブラジル、カナダ、インド、ロシアの6カ国は広い面積を持っていますから、GDPが大きくても密度はいたって希薄です。

一方、ヨーロッパ諸国は小さい国土の中で産業を発展させて来ましたから、密度は高くなっています。

しかし日本は、それらの欧州諸国に比べても断トツに密度が高くなっています。

さらに、ドイツ、イギリス、フランスは国土が平らですが、日本は国土の8割までが山岳ですから、実効的なGDP密度はもっとずっと高くなっているでしょう。


次に、下図は、原発設備容量(青)と、それを国土面積で割った原発密度(黄)です。






GDP密度と同じ傾向です。

アメリカは世界一の原発大国ですが、国土が広大なので原発密度は低くなっています。
ロシアも原発大国ですが、国土が広大なので密度はスカスカです。

中国、ブラジル、カナダ、インドにはまだ原発は多くありませんが、これらの国も国土が広大なので原発が増加しても密度はほとんど上がりません。

ドイツ、フランス、イギリスは、GDP密度と同様、原発密度も高くなっています。

フランスは、国土が比較的広いのでGDP密度はイギリスやドイツよりかなり低くなっていますが、国策によって自国の必要量以上に原発で電気を作ってヨーロッパ諸国に販売していて、原発の数も密度もイギリスやドイツよりずっと大きくなっています。

しかし日本は、それらの欧州先進国に比べても断トツに原発密度が高くなっています。

福島の原発事故への対処について、チェルノブイリではどうだった、スリーマイル島ではどうだった、それに比べて日本の政府はなってない、という批判がたくさんあります。しかしこのグラフを見れば、日本という国が、アメリカやロシアに比べて原発事故への対処がもともと極めて困難であることが一目瞭然です。(そんなところに原発を次々に建てるほうがどうかしていますが)


幸せの限界密度

これらのグラフから、日本が狭い国土で猛烈に働いて生産量を上げていることが分かります。

しかし、ものごとには限度があります。

人は幸せになるために働きます。働いて、働いて、ますます不幸せになっているようでは働く意味がありません。日本人はなぜこんなに働くのでしょうか。



ひとつには、個人の確立ができていない、という精神の幼稚さがあるためでしょう。

狭い島国で千年も二千年も農耕をやってきて、長いものには巻かれろ、出る杭は打たれる、という精神が民族にしみついています。
ですから、企業社会になっても、たとえば「サービス残業」などがはびこります。経営者たちはサービス残業を放置、むしろ奨励してきました。サービス残業はサラリーマンの美徳であり、有給休暇を消化しないことも美徳だというわけです。それを不当だと怒る日本人はいません。個人の権利意識が発達した欧米人には考えられないことです。
サービス残業はまた、先進諸国の基準から見れば明らかに労働ダンピングです。日本では企業間で労働ダンピングによる無限の競争が続き、それが国際競争に勝つ原動力にもなって、生産力がどんどん上がってきたわけです。



もうひとつは、怠けていたら欧米にやられてしまうという強迫観念です。

江戸時代の太平の間に、欧米列強はアジアを侵略しました。日本も、ペリーの砲艦に脅かされて開国し、それからは国民が一丸となって欧米に追いつけ追い越せと必死に頑張りました。しかし結局、80年後に欧米列強(アメリカ)によって国を焼かれ全てを失いました。

それから60余年、日本は再びはい上がって来ました。
怠けていたらまた欧米列強にやられてしまうという強迫観念が、戦後復興の原動力でした。
そして、今でもその強迫観念によって、限度なしにどこまででも突っ走ります。


その結果が上の二つのグラフです。

原発を増やして電力の50%以上をまかなう、という民主党の「国策」が実行されていれば、原発密度は今の倍以上になるはずでした。



人々が幸せになれる「限界密度」があるはずです。
日本の社会は今、限界密度を越えてしまっています。


日本は、これから人口が急減します。少子高齢化です。
日本全体が自然にスローダウンする時代になりました。




原発を動かさなければ企業は出て行く、と経済界は言っています。 

それもよいでしょう。日本国内での工業生産のピークは終わりました。
福島の原発事故がはっきりと終了の鐘を鳴らしています。
日本人は幸せを求めて、工業生産一辺倒ではない、別の道を歩まなければなりません。



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