災害の名前 2  平成東電原発災害

2011.03.24




今回の東電福島の原発災害は天災でも事故でもなく、明治三陸津波で38メートルの記録がありながら、津波の想定値をたったの5メートルとし、海岸べりに原発を並べて、安全だ、万全の対策だ、と言い続けた東電による人災です。


右の記事によると、津波の想定は土木学会の基準に従ったということですが、土木学会とは土木工事の基準を決めるところで、堤防とか道路とかの話です。堤防や道路は全国に山ほどありますから、それらをいちいち特別な基準で作るわけには行きません。ある程度の備えはしても、いよいよ津波で流されたらまた作ればいいという考え方です。

しかし原発がそれでは困ります。

ところが驚いたことに、実際は、原発はその程度の基準で設計されていたわけです。

たぶん、全国の原発が同じような設計基準でしょう。


福島原発の津波対策について、東電は以下のように説明してきました(現在もそのまま)。



東電福島原発ホームページより

津波への対策. 
原子力発電所では、敷地周辺で過去に発生した津波の記録を十分調査するとともに、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、重要施設の安全性を確認しています。また、発電所敷地の高さに余裕を持たせるなどの様々な安全対策を講じています。




過去の記録の調査だとか最大級の津波だとかシミュレーションだとか、もっともらしく書いていますが、全部ウソだったことがバレてしまいました。土木学会が5mと言うから5mにしましたという、ただそれだけのことだったのでした。
台風シーズンには太平洋岸には5mの高波など、いくらでもやってきます。
東電の安全意識はその程度でした。

上の図だとなんだか安全そうに見えますが、
海側から実物を見るとほぼ海抜ゼロメートルです。
津波への備えはゼロにしか見えません。
堤防も役に立ちそうもありません。

実際にまったく無防備だったわけです。

津波というのは人間には大きく見えても地球的な感覚では太平洋というタライがちょっと揺れて、タライのふちにチャポチャポと波が来たようなことですから、この写真を見れば、これで安心だと思う方がおかしいのです。

実際の津波の高さは福島沿岸で14mくらいだったようです。
敷地内へは300mほど波が来たということです。


上図はグーグルの航空写真です(何でも見えてしまいますね)。

左下の目盛りが200mですから、浸水域が300mということは、原発が立っているところあたりまでが浸水し、木が生えているあたりはほとんど水につかっていないということです。

ですから、防波堤がどうのこうのという前に、原発を、もうちょっと奧に置けばよかったというだけの簡単な話です。そうしていれば今の災害は起きていませんでした。給排水は掘割りを作ればできます。

なぜそうしなかったのか。なぜそれができなかったのか。

実はそこに原発問題の本質があります。


原発問題の本質

原発は経済的にペイしていないのです。それが原発問題の本質です。

ふつうの経済的な営為には、故障や事故などの危険に対して保険がかけられて、保険料を合算してペイするかどうかが検討されます。

しかし原発には、大きな事故が起きたときの保険がかけられていません。
支払いが天文学的になるので、保険会社が引き受けられないのです。
法律で、事故が起きたらあとは野となれ山となれ、ということに決まっています。
あとは政府が補償するという法律です。
最後は責任をとらないのですから、関係者は精神の根本でマジメさや覚悟に欠けます。

また、使用済み燃料や放射性廃棄物の処理や廃棄に必要な本当のコストが電気料金に加算されていません。最終処理の方法も決まっておらず、放射性廃棄物によって子孫たちがこうむる迷惑も計算されていません。これも、野となれ山となれです。

このように経済的にペイしていないものを、
ペイしていると偽ることで原発は成立して
います。

保険と廃棄物処理を除外しておいて、あたかも石油と競合できるかのように偽装します。

そしてそのために安全面が手抜きされ、1000年に1度の災害になんか備えらるか、ということになります。
(40年で来てしまったわけですが)

そのような日本政府と電力会社のやり方は、右の記事にあるように、同盟国のアメリカから見ても大いに不安です。

カミカゼ特攻隊のように見えるのかも知れません。




















根本がウソで、感覚がマヒしていますから、あとはいくらウソをついても平気です。

東電のホームページがウソの羅列になるのも当然です。
事故隠しやデータ捏造も日常的に平然と行われてきました。
廃炉のスケジュールもなしくずしで延ばされました。
現場労働者は危険で劣悪な条件での労働を強いられています。
経産官僚も電力会社も保身だけで、国民の安全を守る気持ちはありません。
マスコミは電力会社からの巨額の広告費が欲しくて真実を伝えません。

上の記事の「プルサーマルは国策だから電力各社に選択の余地はない」という証言にあるように、自民党と経産官僚によってプルサーマルは強引に進められました。反対した福島県前知事の佐藤栄佐久氏は、検察による全くのでっち上げの罪で逮捕され、失脚させられました。佐藤氏は検察から「あんたは知事としてよろしくない。抹殺する」と言われたそうです。その捜査には厚生省村木局長の事件で、大阪特捜で証拠を捏造したあの前田検事も参加していました。

その強引な政策の結果が、今、危機にある福島原発3号炉です。
昨年の秋からプルサーマルでの運転が始まりました。
その燃料棒が破損し、いま、大量のプルトニウムの漏洩、噴出の危険がせまっています。

しかし、誰も責任をとりません。

終戦前夜、阿南陸相は「一死大罪を謝す」と遺書をのこして切腹しました。その直前に宮中に参内して天皇に拝謁した阿南を見送って、昭和天皇は「阿南はいとまごいに来たのだね」と侍従に言われたそうです。戦前戦中の陸軍首脳の大罪は陸相の切腹で消えるものではありませんが、それでも、このような責任の取り方や潔さは評価されるべきでしょう。



原発はウソで成り立っています。ウソのかたまりです。


問題を解決する方法は、政府や電力会社がウソをつかないで済む社会を作ることです。
それしかありません。


原発をどうするか。


政府および電力会社は以下のことを実行します。

1.原発は今の電気料金ではペイしていないことを国民に正直に言う。
2.再処理まで含めた正直なコストを積算し電力料金を定める(保険は別にしても)。
3.電力会社の本社を原発の敷地内に置く。


また、国民は以下のことを受け入れます。

1.電力料金の値上げを受け入れる。
2.原発を電力の消費地で受け入れる(東京原発、大阪原発など)。


こうすることで自然に節電が進みます。それに人口が減っているのですから電力消費は増えません。また、野放図に都市を大きくすると電力が不足がちになりますから、人が地方に分散します。消費地で発電すれば送電コストが格段に下がります。これらの措置で、電力消費は現在の半分くらいになるでしょう。

その
一方で、ガスタービン技術を改良したり、天然ガスをロシアと共同で開発します。


原子力発電のコストが不当に安く算定されているために、代替エネルギーの開発が阻害されています。正しく算定することで風力などの代替エネルギーの開発が進みます。

これで原発は、あっても必要最小限になるでしょう。


今からちょうど20年前の1991年2月に関電の美浜原発で細管破断事故が起きたとき、私は、「大阪原発」を作ることが原発問題の真の解決策であることを、関電や関係者に訴えたことがあります。それに対しては、当時の関電の副社長も共感を示してくれました。

今でも私の考えは同じです。原発の電力を使う者が原発のリスクを負うべきです。


放射能は宇宙の混沌であり、生命の秩序と相容れません。地球は長い年月をかけて、地磁気や水や大気で、宇宙の放射線から守られた生命の楽園になりました。その生命の楽園で、宇宙の混沌である核のエネルギーで大規模な発電をすることが、そもそも間違っているのです。

鳥も獣も魚も、虫も花も草も木も、誰も望まないことです。

それを承知で、日本国民がどうしても日本に原発が欲しいというなら、政府と電力会社と国民は、上記のようなコンセンサスを形成すべきです。



高速増殖炉をやめて地震予知の研究を

高速増殖炉は技術的に不可能です。一滴も漏らすな、など人間業では出来ません。
経済的にもまったくペイしません。社会的にも無意味です。
ドイツもアメリカもフランスも撤退し、やっているのは日本だけです。

文殊は試験炉です。目的は先にあります。
開発の最終目的は、高速増殖炉を日本中に10基も20基も作って運転することです。

しかし、そんな時代は1000年たっても来ません。

高速増殖炉の研究開発は壮大なムダでしかありません。

高速増殖炉の巨額開発費のたった100分の1でも、たとえば地震予知の研究にあてれば、日本だけでなく世界の人々が大きな恩恵を受けます。

役に立たない研究はやめて、国土と国民を守る研究にシフトすべきです。

現代の地震予知は地震学ではなく、物理学であり化学であり電磁気学です。地球内部に蓄積されたストレスによって地上や大気中に現れるシグナルを、地震が発生する1時間前とか1日前にとらえることは、今では十分に可能性があります。

それは物理学、化学、電磁気学ですから、
「文殊」の研究員をそのままシフトできます

地震予知の分野で奮闘してきた地震学者の上田誠也博士が、偶々、地震の前日の3月10日発売の中央公論4月号に「どうする! 日本の地震予知」という文を発表し、日本が国家として地震予知をやめてしまったことを書いていますので、紹介しておきます。
http://www.chuokoron.jp/2011/03/post_67.html


ほかにも、高速増殖炉開発の何千億円という予算があれば、あれもできる、これもできるという研究分野がたくさんあります。高速増殖炉を中止して予算を他の科学分野に回すのが国のためです。


平成東電原発災害

私は、多くの少年がこれからの日本は原子力だとあこがれた時代に、京大の原子核工学科に入学しました。1学年20人の小さな学科でした。他大学が原子力工学と言っているときに、原子核工学と名付けたのは京大の学風です。原子力一辺倒ではないということです。
私も、「放射線取扱主任者1級」の資格を取ったりはしましたが、結局、原子力発電には関与しませんでした。

あれから40年以上たちますが、京大には「反原発」の思想や人物が、むろんメジャーにはなれず、教授にもなれませんが、少なくとも「排除されず」に脈々と残り、世に警告を出し続けてきました。
異端を排除しないのが京大の京大たるところです。

その人たちの意見に耳を傾けるべき時が来ました。


今回の原発災害で国民の意識は大きく変わりました。
これは人災です。これを「津波」という呼び名に埋没させてはいけません。
自然災害である津波とは別に、固有の名をつけて後世に残すべきです。

この災害を
「平成東電原発災害」と正しく呼ぶことが大切です。



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