「国際フォーラム」の政策提言に反論する 

2014.08.08


8月6日の毎日新聞で、「公益財団法人日本国際フォーラム政策委員会」という民間団体が、「積極的平和主義と日本の針路」と題して政策提案をしています。
 




メンバーを見ますと、外務省OBや政治家、大学教授、評論家などから成る、日本の比較的良質な保守層の集まりのようです。(ただし西村慎吾氏が入っていますが)
この人々が明確に、集団的自衛権容認の閣議決定を支持しています。
ですからその理屈は、おそらく、安倍総理の説明よりもよりもずっと論理的で分かりやすいはずだ・・・・と期待して読んでみたのですが・・・・・かなり呆れました。




初めから歴史認識が単純すぎて、おいおいこの人たち大丈夫かい、と思ってしまいます。

やたらと文章を「格調高く」見せようとしていますが、内容は陳腐です。ソビエトが崩壊して以降はアメリカの一極支配であって、多極支配になったことはないし、無極支配になりつつあるという現実もありません。現状は、20年続いたアメリカの一極支配が、ロシアや中国の台頭で破られつつあるのです。

イラクのクェート侵攻は、アメリカにだまされた結果です。これは戦前、わが国軍が仏印に進駐したのと同じで、フセインはうっかり米英にだまされてクェートに侵攻してしまい、アメリカの手のひら返しで国を失い命を失いました。いきなりABCD包囲網を食らって対米英戦に引きずり込まれた日本とまったく同じです。

911のテロもアメリカの自作自演です。4機の飛行機を同時にハイジャックできる確率はほとんどゼロですし、セスナの操縦を習ったアラブ人が大型ジェット機を、旋回しながらビルに命中させることはできませんし、上部に飛行機がぶつかっただけの鉄骨ビルが根元から崩れることはありませんし、ましてやそこから500メートル離れたビルが勝手に倒壊するわけがありません。

国際フォーラムに集う人々には、そういう視点はまったくないわけで、この人たちはどうやらアメリカの言うことを聞いてアメリカに隷属していれば、日本は安全安心だと信じ込んでいるようです。
そのようなノーテンキな感覚の人々に、日本の針路を任せるわけには行きません。





伊藤憲一という人のパーソナリティなのでしょうが、やたらと名文調を書きたがる性向があるようで、「時あたかも」などという表現は、手あかまみれの噴飯ものです。

アフガニスタンには何の罪もありませんし、イラクにも大量破壊兵器はありませんでした。どちらも、一極支配におごったアメリカが勝手にやった蛮行です。ドイツもフランスもイラク侵攻には反対しており、国連決議もないまま、ブッシュが勝手にイラクを攻撃したのです。

今回のロシアのクリミア併合を、ナチスのズデーデン併合になぞらえていますが、この人たちは本気でそう思っているのか。本気なら痴呆ですから、おそらく自分の主張を補強するために手当たり次第に材料を出しているだけなのでしょう。

この20年の間にアメリカは、世界中で民主主義革命とやらを仕組み、政権を転覆し、政情を不安定化させてきました。同じことを、プーチンがソチ五輪で多忙な時にウクライナで仕組み、ウクライナの政権を転覆し、それに怒ったクリミアのロシア人がウクライナを去ったのです。クリミア半島は、英露が戦ったナイチンゲールのクリミア戦争の時からロシアの領土であり、ロシア革命の聖地でもあったのです。その住民がロシアを選ぶのは当然で、民族自決です。

国連での決議は、反対と棄権を合わせて反対と見るべきです。
国際世論は2分されているのです。



集団的自衛権と集団的安全保障とは、まったく別のものです。
国際フォーラムもそれが分かっていますから、さかんにエクスキューズしています。

集団的自衛権とは、簡単に言えば、アメリカが他国から攻められたとき、日本は武器を持って駆けつけますよということです。世界中どこでも、アラブでもアフリカでも行きまっせ、というわけで、アメリカから頼まれたらそうする、ということです。そして国際情勢によっては、ロシアと組んでアメリカを攻撃することもあり得るということです。憲法停止で、どこと組んでどこと戦うかは、その場その場で政府が決めるというのが、解釈改憲です。

しかし日本国憲法はそれを許していません。

自国が攻められた時、反撃するのは自然権であり、いかなる国もその権利は持っています。国が戦わないなら民が戦います。
しかし他国が攻められた時、それを助けに行く権利などというものは、そもそも概念としてありません。義によって助太刀いたす、などということは、やりたければ勝手にやったら、という程度のことでしかありません。

国際フォーラムは、閣議決定を歓迎すると言っていますが、それは彼らの政治的な信条でしかありません。自分の政治的信条だからといって、憲法が禁じていることをやっていいという理由にはなりません。それでは法治国家ではありません。

国際フォーラムはそこをごまかしています。国民はそこに疑念を抱いているのです。なぜ憲法を改正せずとも、解釈だけで180度転換できるのか、国際フォーラムはその理屈をはっきりと言うべきです。それを言わずに、言い訳ばかりをしていては説得力はありません。



なんだかもう、発想がおかしくて反論に疲れるわけですが、どうして1928年なのか。
その後日本は1941年に自存自衛のために世界を相手に戦争を始めたわけですから、理念的に1928年の前後で区別しろ、と言われても、それは名文調でまとめ上げたいという、伊藤憲一氏らの国際フォーラムの趣味的な頭の中がそうなっているだけで、何の意味もありません。

不戦条約も大西洋憲章もカイロ宣言も、アングロサクソンの世界支配の理屈でしかありません。

日本はその思想を元にして北方領土の返還を要求している?そんな話は聞いたこともありません。


わが国民の多くは、一国平和主義で良いと思っているわけではありません。憲法前文にあるように、国際社会で名誉ある地位を占めたいと思っています。ですから、国連軍が創設されて国際的な無法者と戦う時には、日本の若者も勇躍して参加すべきですし、その名誉は国民的に認められ、守られなければなりません。
それが集団的安全保障です。それは集団的自衛権とはまったく違うことです。

集団的自衛権とは、国際世論が2分されている時に、一方に加担することです。
それでいいのか、と国民は思っているのです。


伊藤憲一氏は、なぜかロシア憎しで凝り固まっていますが、クリミア半島の帰属について、ロシアが力で奪ったという見方はフェアーではありません。フルシチョフの時代にクリミア半島をウクライナに帰属させたのは、まさかウクライナがソビエト連邦から離れていく事態が来るとは誰も想定していなかった時代に、行政区分として便宜的にウクライナに割り振ったに過ぎません。

ソ連が崩壊した時に、ソ連からいろいろな自治区を独立させたのは、アメリカの差し金でしたし、今回はウクライナをEU側に取り込もうとして革命を扇動し、そのための人や資金や、あるいは狙撃手までをもアメリカが送り込んだことも、アメリカの政府高官の証言で明らかになっています。
また、先日のマレーシア航空機の撃墜事件では、アメリカはさまざまな「証拠」を出して、親ロシア派がミサイルで撃墜したといち早く断定しましたが、その証拠がねつ造であったことが次々に明らかになってきて、アメリカは沈黙しています。

プーチン大統領は、ロシアがクリミア半島を併合した時に、伊藤氏の言う「先進民主主義国」(伊藤氏の定義は、経済的にはG7,政治・軍事的にはNATOおよび日米同盟)からの批判に対して、この20年間にアメリカがアフガンで、イラクで、チュニジアで、リビアで、エジプトで何をしてきたか、我々はずっと注視してきたと述べました。

「国際フォーラム」はアメリカの言い分を100%肯定し、ロシアの言い分はすべて否定するという考えですが、そのような立場は世界世論の少数派でしかありません。

伊藤氏は今次のクリミア半島併合と第二次大戦終了時の北方領土を同列視していますが、それは逆に、ソ連による北方領土の占領は、今次のクリミア半島の併合と同じだと言っていることになり、もし、ロシアのクリミア併合に理があると国際世論が認めれば、2つを同列視することは、むしろ北方領土についての日本側の要求の論拠を崩してしまうことになります。



伊藤憲一氏は、何が何でもロシアを掣肘したいわけですが、しかし現実は、クリミア半島の併合について、世界世論はもうロシアの振る舞いをほぼ承認してしまっています。あるいはもう忘れてしまっています。それはつまり、そもそも世界の怒りはそれほど大きくなかったということです。

伊藤氏は、日本はあくまでロシアに対する経済制裁を貫徹すべきだと主張しますが、相当に教条主義的な近視眼です。クリミア半島処分は認めるが、中国の南シナ海への進出には反対する、という主張は、理屈としても現実問題としても十分に可能です。可能と言うより、そもそもこの2つはつながっていないのであって、つなげて見ているのは伊藤氏だけでしょう。



ここで伊藤氏は、しかし国連の集団安保体制はまだ成立していないから、とりあえず「先進民主主義国」(経済的にはG7、政治・軍事的にはNATOおよび日米同盟)に同調すべきだ、と論理を転換し、ロシアや中国を切り捨てています。そしてそれに反対する者を「無知」と切り捨てます。

そして伊藤氏は、1928年の不戦条約以降は、世界には戦争は存在せず、存在したのは侵略行為とそれに対する制裁だけだったとして、1941年にわが国が決然として決起したことは、単なる侵略行為でしかなく、それに対する連合軍(アメリカ)の無差別爆撃や原爆投下は、正義の制裁行為だったと言います。

まるでアメリカの代弁者です。

これはしかし、伊藤氏のあこがれ、正しくは単なる「思いこみ」の裏返しに過ぎません。実際には白人たちのG7は、心の中では、日本人(アジア人)を蔑視しており、能力的にも劣る人種だと思っています。そこを十分に心得た上で、世界情勢に対応すべきですが、伊藤氏はナイーブに過ぎます。





結論1は賛成です。
結論2も賛成です。
結論3は反対です。今回の閣議決定は明確に憲法違反です。
結論4は反対です。過度にアメリカに依拠してはなりません。
結論5は反対です。事実誤認があります。
結論6は反対です。これは「ないものねだり」で、信長秀吉家康以降の日本人には、世界を指導する能力がありません。

信長秀吉家康は、世界を対等に見ていました。実際に世界は対等だったのです。
しかし260年の鎖国を経て、日本と欧米との間には大きな差ができてしまいました。
明治維新以来の日本人は、現在でも、白人と対等ではありません。日本人の心の奥底に、白人に対するコンプレックスがあります。


空威張りは言わず、経済や人的交流においては世界に門戸を広げながら、政治的には極東の小国として生きていくのが、これから人口が減少し高齢化する日本にふさわしい生き方です。

そして戦後70年、日米安保条約を破棄して日本は独立を果たすべきです。どの国も一国では防衛できない、などと言う総理がいますが、そんなことはありません。日本は島国ですから、専守防衛の軍備さえ持てば国を守ることができます。

そもそも、誰が日本に攻めてくると言うのか。中国も朝鮮もフリィピンも、日本から攻められたことはあっても、日本に攻め込んできたことはありません。彼らが日本を恐れることはあっても、日本が彼らを恐れる道理はありません。

日本への侵略があるとすれば、今そうであるように、アメリカしかありません。

戦前の日本はそれが悪夢でした。それゆえに暴発し、まんまとアメリカの餌食になりました。しかし今はもうペリーの時代でも先の大戦の時代でもありません。ベトナムもアフガンもイラクもウクライナも・・アメリカの思い通りにはなりません。今やイスラエルが存亡の危機です。

アメリカの横暴には国際世論が対抗してくれるでしょう。

伊藤憲一氏に代表される 「したり顔の識者」 は、アメリカからの独立など、実効性のないスローガンとしか見ません。しかし時代は変わりつつあります。「戦後レジュームからの脱却」と言うならば、その真の意味は、アメリカからの独立であり、それは国民が決意すれば可能です。

「国際フォーラム」はアメリカの一部の勢力の代弁者に過ぎません。

というわけで・・・・

わが国の良質な保守層が集まっていると思われる団体から、集団的自衛権の行使容認を支持する意見が表明されたので、内容はいかにと、敬意を表して熟読したわけですが、残念ながら、理屈に合わない自己満足だらけの、つまらぬ考えの羅列でした。
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