原発とお金 3題話 その1 発電コスト

2011.09.08


原発とお金について、最近3つの話題がありました。

その1です。

経産省の外郭団体である財団法人日本エネルギー経済研究所が、原発の発電コストの方が火力発電より安い、という研究結果を発表しました。

日刊工業新聞 2011年9月6日







エネ研から発表されている報告書
http://eneken.ieej.or.jp/data/4043.pdf

を読むと、立命館大学の大島教授が以前から「原発のコストは実際には高い」、という研究結果を発表していて、それが最近マスコミに取り上げられていることに対する、「原発推進派からの反撃」ということのようです。

エネ研は、大島教授と同じ方法を採用し、「有価証券報告書」を分析して原発のコストを計算し、大島教授が12.23円/kwhとした計算結果を、前提条件をいろいろと変えるなどして、7.2円/kwhまで下げることに「成功」しています。

大きな違いは、大島教授が1970年代からのトータルで設備費をコストに算入しているのに対し、エネ研は直近の5年だけで計算して、つまり償却が終わった資産は発電コストに入れないことで、1.7円の減額に「成功」しています。

昔は高かったけれど、今はもっと安いんだ、ということです。
しかし、それは恣意的な計算で、全部トータルするのがまっとうなやり方です。

ほかにもいくつかの条件を変えることで、トータル5円の減額に「成功」しています。



一方で、報告書自体が言っていますが、廃炉費用や廃棄物の処理費は、電力各社が有価証券報告書に記載している金額をそのまま採用したので、実際には足らないかも知れない、ということです。

しかし、「かも知れない」ではなく、そんなものでは足りないに決まっています。


また、福島の事故の補償については10兆円と仮定しています。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110831-OYT1T00876.htm


賠償加算しても、原子力は火力より安い…エネ研

経済産業省所管の財団法人・日本エネルギー経済研究所は31日、原子力や火力などの発電コストを試算した結果を発表した。
原子力は1キロ・ワット時あたり7・2円、火力は10・2円となり、原子力のコストが火力より安くなった。
電力10社と電力卸2社の有価証券報告書をもとに、2006〜10年度の5年間平均の実績値を計算した。試算では、燃料再処理費や廃炉費用は、各社が積み立てている額などをベースにしており、「将来、実際にかかる費用とは異なる可能性がある」としている。
東京電力の福島第一原子力発電所事故による賠償額を10兆円と仮定し、1965〜10年度の46年間の発電コストに上乗せすると、1キロ・ワット時あたり1・3円が加わって計8・5円となり、火力との差が縮まる結果になった。

(2011年9月1日00時10分 読売新聞)


そして、その10兆円を、直近の5年の発電量にかぶせるのではなく、1965年からの全発電量にかぶせることで「薄めて」います。しかも東電だけでなく全電力会社に割り振っています。

その結果、1.3円/kwh増えて、8.5円/kwhとなり、「火力との差が縮まる結果」になったと報告しています。

設備費用は直近の5年で計算して、事故補償は
これまでの全発電量で割り算し、これが発電コストですと言うのは、正しいコスト計算ではありません。

しかも、10兆円ではまったく足りません。
福島の除染だけでも100兆円はかかると言われています。


経産省は、「それは税金でやるから電力料金とは関係がない」
という理屈でしょうか。



報告書を実際に書いた人は、エネ研の組織から判断すると、

http://eneken.ieej.or.jp/about/staff/2010/murakami_tomoko.html

村上 朋子(むらかみ ともこ)
戦略研究ユニット 原子力グループ グループマネージャー 研究主幹
専門分野:企業経済学、企業財務分析/原子力工学
1990年 東京大学工学部原子力工学科卒業
1992年 東京大学大学院工学系研究科原子力工学専攻修士課程修了
2004年 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了、経営学修士
2005年 (財)日本エネルギー経済研究所 入所

という人のようです。

当然、上司(理事のほとんどは経産省)の承認があって、経産省もOKしての発表でしょうから、すなわち、これが経産省の考え方で、原発は安い、もっとやろう、ということです。

菅総理の退陣で、こういう勢力が露骨に動き始めました。


私はスライドショウ「脱原発の道」で次のように言っています。
http://www.minusionwater.com/slideshow1.htm

原発のコストは、電力会社自身がおよそ15円/kwhと言っています。

しかしそこには事故の場合の保険がかかっていません。
何かあったらすべて税金で始末することが法律で定められています。
それは最初から自民党と電力会社との間の了解事項です。
それは民主党政権でも変えられません。ですから東電はつぶれません。

事故の補償は、ごく初期の試算で48兆円と言われています。
東電が負担すれば16円/kwh、全電力会社で負担すれば8円/kwhになります。
廃棄物の処理は全体で20兆円とも30兆円とも言われています。

どちらも確定していませんが、それらを加算すれば原発のコストは30円/kwhくらいになります。




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