科学論文 水の磁気処理
学会誌 磁気と磁性物質 2000年 209号 71-74ページ
2010.01.15
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水の磁気処理 J.M.D. Coey Stephan Cass トリニティカレッジ物理学部 ダブリン アイルランド 概要 本論文において、120mg/l程度のカルシウムを含有する水を加熱することで形成される炭酸カルシウムの性質がX線回折と電子顕微鏡で特定される。32対の試料によって、静磁場(約0.1テスラ=1000ガウス)を通って出てきた水は、沈殿物中のアラゴナイトとカルサイトの比を増加させていることが、99.9%の確率で確定される。現象には数時間の潜在成長期間があり、また磁気処理の記憶は200時間を越えて存在する。 |
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硬水における石灰凝固物付着の問題は、炭酸カルシウムCaCO3の溶解性が温度が上昇するに連れて減少するために起きる(1)。ボイラーや熱交換器や家庭の温水系統に固い石灰凝固物が形成されることによって巨大な量のエネルギーが無駄になっている。さまざまな、磁気や電磁気や静電気の器具が石灰凝固物の形成を制御すると称して家庭用や産業用に世界中で販売されている。典型的な製品は永久磁石を組み合わせたもので、大きな磁石構造物が醸造業から発電所までの広範な産業に日常的に使用されている。磁場が水に良い効果を与えるという信念が、中国において何百万もの磁気カップの販売をもたらしている。 |
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そのようなありきたりさにもかかわらず、水の磁気処理についての科学論文は比較的少ない。それがいかにして起こるか、あるいは起こるかどうかさえ、はっきりしない。化学的な方法による軟水化と違って、磁気処理は水の化学組成に直接的な効果は持ち得ない(磁石が水に直接触れていない限りは)が、それでも炭酸カルシウムの凝固物の形態や付着を変化させると主張される。公開されたデータはしばしば相矛盾している。例えば磁気処理水からの炭酸カルシウムの沈殿物は、カルサイトが支配的かあるいはアラゴナイトが支配的かという論争がある。これらはCaCO3の一般的で自然な形で、それぞれ、菱面体と斜方晶の結晶構造を持つ。 |
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アラゴナイトはカルサイトより高い密度を有し、固い凝固物を形成する傾向はカルサイトより少ない。磁気処理の効果は数十分から数百時間持続すると報告されている。ベイカーとジュッドによるレビューの論文がある(2)。 これらの、そして同じような、磁場効果が、他の塩化物の沈殿や、コロイドの凝固や、原油からのパラフィン形成などにもあるという主張は、かなり強い懐疑論に直面してきたが、その主たる理由は、これらのどの過程にしても、磁場が影響を与えるような明白な道筋がないからである。 データには再現性がないものが多く、そしてたぶん現象そのものにも再現性がないのだが、これは実験条件の制御が不適切であったこ |
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との結果かも知れない。そこで我々は何らかの効果が存在するかしないかを確定することを始めたのである。 我々は、同じように処理されていて、磁場がかけられたかどうかでペアーにした試料を用いて、ブラインドテストを実施した。得られた結果には考慮すべき変動性があるが、我々の方法は我々に、鍵となる問いに答えることを許容しており、何らかの関連性のある変化を特定することを許容している。 それぞれ異なる水と異なる磁気装置を用いた、2つのグループの実験が実施された。第1のものはダブリン西方の石灰岩地の井戸から引き出された水についての実験である。その水はテフロンコートされたフェライト磁石のリングの束を装着したプラスチックフィルターを通すか、またはその磁気装置をバイパスするかして引き出すことができた。 |
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その水はポリエチレンボトルに密封され、すべてのテストはブラインドで行われた。 実験者は、ある特定の試料が磁気装置を通ってきたものか、バイパス弁を通ってきたものか気付かなかった。実験の第2のグループは市販の蒸留ミネラル水に対して実施され、それは単にその500ミリボトルからそそがれた。違いは20ミリの分割リング式のネオジム磁石をボトルの出口まわりに装着してあるものと、ないものである。 どちらの場合でも、水は最大0.1テスラで、磁場勾配が約10テスラ/mの磁場にさらされた。水の成分分析は表1である。磁気処理後の見いだしうるたった1つの差異は、井戸水において鉄(Fe)とマンガン(Mn)の含有量が減少したことで、それはカギカッコで表されている。 |
| 表1 磁気処理していない水の成分分析(mg/l)。 磁気で処理した後のたった一つのはっきりした差異はカギカッコで示されている ![]() |
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簡単な定則のもとに、100個以上の試料が試験された。水はある時間 ti の間保管されてから、石灰凝固物を形成するために500ccの開放型ビーカーで80度に加熱された。付着凝固物はビーカーの底に置いた新しい顕微鏡用のスライドの上に集められた。すべての試料はCu Kα放射を用いたX線回折で試験され、そのうちの14個が電子顕微鏡と微量成分分析に選び出された。 |
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カルサイトとアラゴナイトの比は25度<2θ<30度の領域での3つのX線反射の比を測定することで定量された。それらのピークはカルサイト104と、アラゴナイト111および102である。 |
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A=(I 111+I 102)/(I 104+I 111+I 102) の値が炭酸カルシウムのうちアラゴナイトの形をした部分の評価となる。 保管時間 ti は0時間から200時間まで変化させられた。磁石の間を通る流速は、0.04 m/s から 1.2 m/s まで変化させられた。Aは0%から100%までの値をとる。 |
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流速による体系的な影響は見いだせなかったが、データはAが ti に沿って数時間にわたって増加する熟成効果を示唆しており、またAの顕著な増加は磁気処理後200時間は維持されることを示唆している(図1)。 磁気処理なし(A=7%)と磁気処理あり(A=54%)のミネラル水からの炭酸カルシウム沈殿物の電子顕微鏡写真が図2に示される。 |
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| 図1 磁気処理していない水(+)と処理した水(○)のアラゴナイト比率が保管時間 ti によって変化していく様子。(●)は差。 | 図2 磁気処理されていないミネラル水(左)と、磁気処理されているミネラル水(右)からの炭酸カルシウムの沈殿物の電子顕微鏡写真。 |
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長い針状の結晶(約30x3x3 μm3)はアラゴナイトで、等軸晶(約4μm)はカルサイトである。 典型的な微量分析が表2に示される。成分の主たる差は、針状結晶ではマグネシウム(Mg)が少なく、マンガン(Mn)が存在しないことである。どちらも鉄(Fe)は含有していない(0.1%以下)。 それぞれが磁気処理していないコントロールを含んでいる32対の試料の比較が表3にまとめられている。 |
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| 表2 ミネラル水と井戸水とからのカルサイトとアラゴナイトの 特徴的な微量成分分析結果 |
表3 磁気処理の効果:アラゴナイトが増加した試験数(↑)、減少した試験数(↓)および変化しなかった試験数(←→) |
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流速の違いや保管時間の違いによって、平均されたデータの標準偏差は大きくなっているが、それでも井戸水とミネラル水の双方において、磁気処理された水のAの平均値<A>tr が、処理なしの水より大きい傾向があるのは明らかである。 磁気処理がAの値に何の影響も及ぼしていない、という無効仮説は、他の条件がすべて同じで、磁気処理したかしないかだけが違っていた、対になったデータに対して直接試算することができる。無効仮説が成立する確率は、井戸水については4%、ミネラル水については0.3%である。 双方のデータセットを合わせて、我々は磁気処理は炭酸カルシウムの沈殿におけるアラゴナイトの量を増加させると、99.9%の確率レベル(3.4σの信頼レベル)で推論する。 |
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それが起こるメカニズムについての著者らの考察 翻訳省略 |
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我々のデータは、磁場が何らかの形で、水が磁石を通過する時にアラゴナイトの核形成を促進し、その核は数百時間安定で、その水が過飽和状態まで加熱される時に、この実験で観察されたような結晶群に成長することを示している。アラゴナイト結晶の体積(3x10−16 m3)から核の数は約10の8乗個/リットルと算定される。 |
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それが起こるメカニズムについての著者らの考察 翻訳省略 |
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それが起こるメカニズムについての著者らの考察 翻訳省略 |
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結論として我々は磁場の効果が存在することを確立している。 我々の実験では、磁場を通ってきた水はその後においてカルサイトよりもアラゴナイトを形成しやすく、磁気処理の影響は200時間以上持続する。磁場がその効果を生み出すメカニズムに関する仮説を検証するには、超純度の炭酸カルシウム溶液に対してさらなる実験が必要である。 |
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謝辞 翻訳省略 おわり 翻訳 吉岡 |

| 考察(by 吉岡) 磁気活水器は100年前から炭酸カルシウムの凝固付着を防止する手段として研究され開発されてきた。そして著者が述べるように、現象の存在は広範に認識され、さかんに実用されてきた。しかし物理化学的なデータは乏しかった。 それが、西暦2000年に発表されたコーエイ教授のこの論文によって、磁気が水に対して持続的な効果を持つことが科学的に確定された。(この論文は磁気処理水に関心を持つ多くの研究者に読まれている有名な論文である) 我々は2004年にこの論文を読み、触発されて、鉄管の錆がどうなるかという実験をした。結果はポジティブで、磁気活水器を装着することで鉄管の錆は減少した。また、起きた変化は200時間以上持続すると著者らは言っているが、図1を見れば元に戻るまでにはあと数百時間かかりそうで、もしそうならば、それは、変化は1ヶ月(約700時間)ほど持続するという、油の混ざり方についての我々の観察結果とほぼ一致する。 宇宙には重力、核力、電磁力の3つの力がある(学生の頃は4つと習ったが、このごろは3つに集約してよいらしい)。あらゆる分子の結合は電磁力で、水分子は水素と酸素が電磁力で結合して形成され、水は、水分子同士が電磁力(水素結合)でつながることで液体として存在する。 つまり水は電磁的存在である。だから水が外部から電磁的摂動を受けて変化するのは当然である。生じた変化が減衰するのに有限時間かかることもまた、自然のことわりである。 電磁的摂動は、さまざまな方法で加えることができる。磁気は代表的な方法である。直接電極を差し込んで電圧を加えたり電流を流したりするのもひとつの方法である。光も電磁波だから、光を照射することでも水は電磁的摂動を受ける。セラミックなどから輻射される遠赤外線も摂動を与える。金属片や金属構造物の間を水を通すことで、電磁的摂動を与えることもできる。高いところから滝壺に落としたり、急流で岩とこすれたりしても摩擦電気が起きて電磁的摂動が生じるだろう。ピレネー山脈などの磁鉄鉱が多い地下水脈で、水が電磁的摂動を受けて湧出してくることもあり得るだろう。 この論文で興味深いのは、maturing effect (熟成効果)が存在するということである。図1は、水が磁気を浴びた後、40時間ほど変化し続け「熟成」していくことを示している。摂動を受けたあともしばらく変化し続けるのは不思議で、ここに磁気と水との相互作用の重要な性質が潜んでいるのではないか。我々の磁気活水での体験でも似たような「熟成効果」が見られる。 (この実験では、磁気処理していないミネラル水でも maturing effect が見られる。その理由は分からないが、それ以上に●のように maturing effect が観察されているので、磁場効果はあると言える) メカニズムの説明として著者らは、水が磁場を通過する時に水の中に「アラゴナイトの種」がたくさんできて、その種が数百時間存在し続けて、水を加熱するとそれがアラゴナイトの形で出現してくると言う。しかし、水に溶解しているイオンが、析出する何百時間も前から核を形成していて、自分がカルサイトになるかアラゴナイトになるかを決めているとはちょっと考えにくい。 また、カルシウムに変化が起きるという考えでは「熟成効果」を説明できない。また、磁気活水で起きる現象はさまざまで、例えば大根が大きく育つわけだが、カルシウムに注目していてはその説明ができず、現象ごとにいちいち別の説明が必要になる。 さまざまな事象の共通因子は「水」だから、水にこそ何らかの変化が起きて、それが持続し、たとえば炭酸カルシウムが析出するときに何らかの影響を及ぼす、と考えるのが自然だろう。 昨年8月に、水中に溶存する酸素のふるまいが磁気で変化していることが日本磁気科学会で報告されたが、それについても、変化は酸素単独で生じたのではなく、水の存在が不可欠で、水に起きた何らかの変化によって溶存酸素が変化したと考える余地はある。 磁気と水との相互作用を説明する統一的な理屈があるはずである。 |