| 波動水?・・・バイオ・シー・パルスのこと 波動水?・・・と称する水を作る装置を販売していた、バイオシーパルスという会社が社会問題になっている。 実は私は、2年前に知人に誘われて(頼まれて)大阪のハイヤットリージェンシーホテルで開かれたバイオシーパルスの大会に参加したことがある。その知人は50代の女性で、その大会のために九州から大阪まで来るので、あなたは物理のことが分かるし、説明を聞けばきっとすごいと思ってくれるから、ぜひ見に来てほしいということだった。彼女はすでにそれをビジネスとしてやっているようだった。 私は「波動なんとか」と称する装置はすべて、「サイエンスの枠外」のものだと考えているし、自分はサイエンスの枠外のものにはあまり関わらないようにしているので、いったんはお断りしたのだが、その人が熱心に頼むので、断って人間関係を壊すこともないし、後学のためにもなるかと思って参加してみた。 今、その会社が社会問題になっていることを見ると、参加しておいて良かったかなとも思う。その2日間、大阪まで通ってその会社の全体の内容を聞いた。そして1週間ほどして、お節介かとは思ったが、その知人に手紙を書いた。「あれは詐○だから、やめたほうがいいですよ」と。 返事はなかった。あれから2年、その後連絡もない。 電気的に磁場を生成し、その磁場を水に印加すると、水が少し変わる・・・・これは物理現象としてある。そして、「臓器ごとの周波数」というものがあって、それを発生させてその電磁波を水に加える・・・それもあり得る話ではあろう。 しかし、その水を飲むと、その水がその特定の臓器の疾患や不具合を改善してくれる・・・・・という話は、そこから飛躍がありすぎる。少なくとも現代の科学では認知されていない。 集会ではまず、その装置のアイディアを出した、という60代のS井という男性(なんとか博士で元は大学の教授というふれこみだった)が壇上で説明した。ずっと以前から「すばらしいアイディア」があって、製品らしき物を作ってはみたが、売れないし、売り方も分からない・・・・・ということだったようだ。そこに、偶然かあるいは何か仕掛けがあったのか、S本という「仕掛け人」が現れて、その仕掛け人はそのアイディアをたった4ヶ月で量産化し、8ヶ月後には販売を開始したということだった。平成12年(2000年)のことだそうである 週刊新潮によると、そのS本という人は、先般詐欺で摘発された「円天」の会長の古い仲間だそうである。(円天の話も、同じようにある知人につきあって聞きに行かされ、いくら使っても減らないお金なんてインチキだからやめときなさい、とアドバイスしたのだが、舞い上がっている人には通じなかった) ビジネスの説明を聞くと、何十万円もする機械を購入するとビジネスができるようになるわけだが、たくさん買い込むほど「良いポジション」で仕事をスタートできることになっていて、「どうせ売れるのだから安くたくさん買っておいたほうがおトクです」という説明があって、「買っておいても、売れるまで家においておくのもムダでしょ?だから会社が預かってあげます。預かり証をお渡しします」ということだった。 これだけ聞けば分かりそうなものだが、それが分からないのである。何十万円、何百万円も先行投資して預かり証をもらうだけである。そんな危ない話があるものかと思うところだが、銀行も証券も保険も年金も、相手の信用度は違うが仕組みは似たようなもの・・・だから、人はそういうことには慣れてしまっているのかも知れない。 ちょっと驚いたのは、発明者?のS井氏が、自分の妻も娘も友人もみんなマユツバだと思っていて、この水を飲もうとしないんだ、と嘆いて見せたことである。なんとも正直な人である。 おそらくS井氏は、はじめのうちは自分のアイディアが商品化されて喜んでいただろう。そして舞台でスポットライトを浴び、報酬も得られるようになり、喜んでいただろう。しかしすぐに、自分が「おかしな商法」に加担していること、多くの被害者が発生していることを知って、忸怩たる思いになったのではないか。 仕掛け人のS本氏もスゴイことを言っていた。 「バイオシーパルスは、価格が高い、効果が見えない、よく分からない。だからビジネスになるんです」 このあからさまなストーリーに、人々がつぎからつぎにひっかかるのである。初めのうちは、そんなはずはない、と思っていても、周囲がそれを信じて盛り上がっていると、だんだんその気になってしまう。さらに自分にも、それが本当だったら「病気にいいかも」「お金がもうかるかも」という「欲望」が湧いてくると、ついフラフラとその気になってしまう。そのあとは自分の判断を正当化するようになり、周囲の忠告は耳に入らなくなる。 これは科学の問題などではない。 S井という人が考えついた製品について、S井氏が効能を唱えて販売し、顧客がその説明を信じて購入して、唱えたとおりの効能があれば、それで誰も文句はない。「なぜそれが起こるのか」という科学的な説明は、ビジネスにおいて必須ではない。そういう説明があればベターだろうが、なければなくても構わない。効能がなければ返品すればよいだけである。言っていたとおりの効能がなければ返品の山で、会社はつぶれる。返品に応じなければ司直に摘発されて、これも一巻の終わりだ。 こんなことは当事者と司直でケリがつくことであって、科学者の出る幕など初めからありはしない。この種の問題について、「私は科学者だ」「これはニセ科学だ」「科学教育がおかしい」などと言うのは見当違いである。 バイオシーパルスの問題は、初めから意図されたものである。たくさん買わせるところが、意図的で計画的だ。被害者がいるのなら、それは消費者と司直とで解決すればよいことで、理系の大学教員がそんなことにかかわって、インターネットにスレッドを立てたりコメントを書いたりしているのは、相当に間抜けなお門違いである。 ![]() この問題について山形大学の天羽優子准教授が、 週刊新潮に以下のようにコメントしている。 ![]() 求められてコメントするのはいいが、相変わらず、理屈がトンチンカンである。 磁石を近づけても動かないから水は磁場の影響を受けない、という理屈はない。 それに、水は磁石で動く。 また、水は情報を記憶できない、と彼女はいつも言うが、どういう意味かよく分からない。 物質が、何らかの物理的な力を受けて状態が変化し、その変化が有限時間持続する、それが記憶あるいは記録というものである。脳の記憶も、磁気記録も、光媒体の記録も、ICチップも、針と溝のレコードも、銀塩フィルムも、みなそうである。 我々の観察では、水は磁場の影響を受けて変化し、その変化は持続する。それは、水が何かを記憶したということである。 彼女は自分のブログで、以下のようにコメントを「補足」している。 「水は磁石を近づけても動かないように、磁場の影響を受けません」 この部分は省略しすぎである。正しくは次の通り。 水は、弱い反磁性体なので、非常に強い磁石を近づけると、磁石から遠ざかる性質を示す。また、強い磁場をかけたところで、磁場の影響が後に残ることはない。バイオシーパルスの装置で使われた電磁石が作る程度の磁場では、おそらく見た目にも何の変化も無いはずである。弱い磁場では水に何の影響も与えないことは、マグティックスターラーという、磁石を使った実験道具で溶液をかき混ぜても、実験に何の影響もないことから明らかである(磁場が強い場合については、医療用のMRIによる健康被害が皆無であることからわかる)。 これでは、たいした「補足」になっていない。 磁場の影響が後に残ることはない、などと相変わらず「証明無し、実験なし」の思いつきの主張を繰り返しているだけだ。 この主張によって天羽氏は、たとえば群馬の高校生の実験結果を、証明なしに真っ向から否定しているわけだが、その理由としてマグネティックスターラーとかMRIとかを5年前から彼女は言い続けている。しかしそれらがまったく科学としての理屈になっていないことを、私はすでにメールのやりとりや「水は変わる」で5年前から指摘し批判している。 群馬の高校生の実験http://www.asahi.com/ad/clients/07jsec/html/2006_final.html 「おそらく見た目にも何の変化もないはずである」というのも、今頃になっていったいこの人はどういう認識か、と呆れてしまう話で、見た目に変化などあるわけがないのである。変化があったら話はずいぶん簡単だ。 「補足」は全体として脈絡がない文章で、後半はさらに無意味である。 もし、バイオシーパルスのカタログに書かれた、 命の根幹である「水」とあらゆるかたちあるものは、電気的(磁気的)信号によって律せられているという事実にもとづいて、水に電気的(磁気的)信号をインプリントし、飲むことで健康・元気をめざすという考え方です。という理屈を認めるのであれば、電子レンジは全面禁止、とならないとおかしい。電子レンジによる加熱は、調理できるほどの電気的・磁気的エネルギーを与えているのだから、電子レンジで温めた水や料理には、電子レンジの2.45GHzの信号が大変強烈に「インプリント」されることになる。この信号が体によいという保証は何もない(バイオシーパルス的には、バイオシーパルスが装置への入力値として勝手に定めた数字の表が正しいということになるはず)ので、そんなものを飲んだり食べたりするのはもってのほかという話になるはずである。 現実にはそのようなことはない。電子レンジで調理した水や食物には何の問題もないという客観的事実がある上に、バイオシーパルスも「電子レンジ禁止」とは言っていない。自らがカタログに書いた主張をちっとも信じていないし守ろうともしていないのは、当のバイオシーパルスの方である。 こんな議論は時間のムダであり、大学教員の仕事ではない。相手は初めから意図的に「仕掛けて」いるのだ。それは科学の問題ではないのである。 一方、磁気活水は科学である。 水には「磁気活水状態」と表現できる状態があり、その状態は有限時間持続する。そのことを示す証拠は世界中にたくさんある。100年前にベルギーやロシアで配管のスケール(カルシウム)付着が磁気によって軽減されたことが、研究の始まりである。今後さらに解明が進むだろう。それはサイエンスである。群馬の高校でも研究している。 (磁気活水が身体にいいかどうか、それは「2チャンネルへの回答」にも書いたように、別の問題である) 天羽氏は、バイオシーパルスについてコメントを求められて、磁気活水の話をした。 天羽氏には、「れっきとした科学」と、「科学でないもの」との区別がついていない。バイオシーパルスと磁気活水とが、彼女には同列に見えている。これでは逆の意味で、バイオシーパルスの被害者たちと変わらない。 科学的なるものと、そうでないものとは、きちんと分けて考えねばならない。 このことを私は、たとえば「水の結晶」についてなどで、何度も指摘している。 水の履歴によって結晶の出来かたに差があると江本氏は言っている。 それは科学的に解明できることだし、解明すべきことである。 しかし、そこから先の江本氏の話は「科学の枠外」である。 ニセ科学批判者たちはその区別もつかず、すべてをニセ科学として全否定している。 「水の結晶」の話は、「科学的なるもの」と「科学の枠外のもの」とから成り立っている。 「ニセ科学」や「詐欺」はそこにはない。ニセ科学批判者らにはそのことが分からない。 |